高市首相が指示した「労働時間の規制の緩和」と「少子化対策」は"絶望的"に両立が難しい理由
「厚生労働省のまとめによれば、今よりも『もっと働きたい』と考えている就業者は全体のわずか6.4%にとどまります。そのうちの半分は、現在週35時間程度で働いている人で、年収の壁を越えて働きたいという意味での回答です。
現行法の上限である80時間を超えて働きたい人はわずか0.1%しかいませんでした。労働時間を維持したい人と減らしたい人の合計が9割でした。圧倒的多数の労働者が長時間労働を求めていないにもかかわらず、なぜ『過労死ライン』を緩める方向へ議論が進むのでしょうか」(小室社長)
旧来型の男性稼ぎ主モデルに回帰で起こること
新政権は維新の会との連立合意書でも「わが国最大の問題は人口減少」と危機感を見せていますが、長時間労働の常態化は、逆に人口減をさらに加速させます。
その理由を見ていきましょう。
戦後の高度成長期は、工業を中心とした「終身雇用・年功序列・男性稼ぎ主モデル」により成し遂げられました。健康な成人男性を基準とした長時間労働が前提で、女性は家庭を守り、家事育児介護に携わる性別役割分業が固定化していました。
しかしこの分業は同時に、女性が結婚出産で退職することを意味します。「人口ボーナス期」と呼ばれる、労働力が余っていた90年代までの日本はこの方法で高度経済成長を遂げました。
しかし90年代後半からの日本は、若者の比率が減り、少ない人口で多くの高齢者を支えなくてはならない「人口オーナス期」(人口の比率が経済に重荷になる時期)に入りました。
先に人口オーナス期に入ったヨーロッパ諸国の例を見ても、支える側の人口が減った国は、男女両方が労働力になれる工夫を徹底的にやっていくという戦略に切り替えています。
先進国では、子どもを教育する費用と期間が大幅に増加するので、男性のみの柱で支えるのでは、2人以上の子どもを育てるのに足りない。夫婦2人ともが家計の柱になれるような社会設計に組み替えていくことが重要です。


















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