高市首相が指示した「労働時間の規制の緩和」と「少子化対策」は"絶望的"に両立が難しい理由
「日本の法定労働時間は週40時間ですが、残業時間の上限は特別条件で年720時間まで認められています。これは2019年から順次施行された『働き方改革関連法』でやっと定められた罰則付きの上限であり、他国の2倍もの残業ができてしまう、非常に緩い規制です。しかし人手不足にあえぐ経済界から、その規制すら緩和させるよう突き上げがあります。
一方、主要国と比較すると、フランスやノルウェー、ドイツ、イギリスなどEU諸国では特別条件はありません。特に、勤務間インターバル(最低11時間の連続休息)が法律で義務付けられているのが大きな違いです。労働者は勤務終了から翌日の勤務開始までに必ず11時間休息時間を取らなければならないので、労働時間もその分、限られてきます」(小室社長)
小室社長は、連続労働を防ぐ勤務間インターバルは、「過労死を防ぐのに有効」と解説します。最も重要なのは、時間外労働の割増賃金率が、日本では異常に低いことだと言います。
日本では「残業させたほうが安い」構造
「日本の長時間労働者の割合(15.1%)は、フランス(9.1%)、ノルウェー(4.8%)、ドイツ(5.7%)、イギリス(11.4%)と比較しても圧倒的に高い水準にあります。さらに、日本の時間外割増賃金率は25%と、他の多くの国よりも低い設定となっています(例:アメリカ・フランス・ドイツ・イギリスなどは50%。ノルウェーは40%以上)。
時給2000円だと仮定すると、日本は2500円の時給で残業させますが、日本以外の先進国は残業は時給が3000円に跳ね上がります。新しい仕事が発生したときに、今いる人材に残業させるコストと、新たな人を雇用するコストが均衡する『均衡割増賃金率』は50%です。
つまり、日本以外の先進国では時間外は1.5倍払わなくてはならないので、経営者は残業させるよりあらたな人材を雇用したほうが安いと判断しますが、日本ではたった1.25倍。残業させたほうが安いと判断する構造になっています」(小室社長)
先進各国と比べると日本は2倍の残業をこなし、残業代は他国の半分でよいという、ブラック労働推進のような労働基準法になっています。どんなに「従業員が選択できる」ことを前提に提示されたとしても、命を守れない労働基準法を日本に存在させてよいのでしょうか。
また、その環境を自ら選んで働きたい人はいるでしょうか……?


















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