姿を消したビットコイン発明者「サトシ・ナカモト」を15年追い続けて浮かび上がった「危険な思想」
私はビットコインのことが頭から離れなくなった。その開発者についても、考えずにはいられなかった。もしかすると、こんなに難しく考える必要などないのかもしれない。インターネットというものは、しばしば再循環された空気でできているかのように思える。タイムスタンプをグラフ化し、変数の名前から読み取れるものまで考察する「ラップトップ上のシャーロック・ホームズ」たちは、電話をかけることすら試みていない。オンラインで事実とみなされた主張も、現実に触れた途端に溶けてしまうことが多いのである。
もしかしたらナカモトは、人間工学に基づいたゲーミングチェアに座り、キーボード操作でタコができた親指を動かしながら、私のような人物からの連絡をただ待っているだけなのかもしれない。ギャビン(ビットコイン開発者の一人)がサトシと連絡するのに使っていたというアドレス、satoshin@gmx.com 宛てに、私はインタビューを求めるメールを送ってみた。
容疑者その1「暗号技術者 アダム・バック」
返事を待つ間、私はナカモト候補として妥当だと思われる人物数名に連絡を取ってみた。その1人がアダム・バックである。彼は英国出身の暗号技術者で、1990年代に「ハッシュキャッシュ」というソフトウェアを開発した人物だ。これはスパム防止ソフトで、計算上のパズル(いわゆるプルーフ・オブ・ワーク)を用いてコンピューターが「正直」であることを証明させるという仕組みだった。
後にナカモトは、同じ技術をビットコインへと組み込むことになる。実際バックは、ナカモトから初めて連絡を受けたと公に知られる人物でもあった。バックが後に明かしたところによれば、彼は2008年8月に、ナカモトという聞いたこともない人物からメールを受け取り、その中でビットコイン・ホワイトペーパー(ナカモトが著したビットコインの基本的な仕組みを解説した技術論文)においてハッシュキャッシュを正しく引用する方法について聞かれたそうだ。


















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