「山の茶屋が消えていく…」 上皇陛下が訪れた老舗も直面する、"登山者の砦"の構造疲労
だが、信玄茶屋にも廃業の危機があった。2019(令和元)年10月12日、台風19号によって陣馬山の麓の相模原市津久井地区で土砂災害が発生し8人が亡くなった。小池さんの自宅も土砂崩れに巻き込まれて全壊したが、奇跡的に大きなけがをすることもなく命は助かった。しかし、家財をすべて失った。
親戚の家に身を寄せたのち、アパートを借りて生活を立て直そうとしたが、茶屋の営業再開のめどはまったく立たなかった。さらに、年明けには新型コロナウイルスのパンデミックが追い打ちをかけた。
「もう廃業するしかないと心が折れかけたのですが、『営業を再開されるのを待っています』『大変だと思いますが、頑張ってください』など、たくさんの激励のお電話やお手紙をいただきました。涙が止まりませんでした」(小池さん)
次世代への継承を考え法人化
パンデミック真っ只中の2020年3月、小池さんは個人事業で営んできた茶屋を「合同会社陣馬山信玄茶屋」として法人化した。そして、その年6月に被災以来8カ月ぶりに茶屋の営業を再開した。
「絶対に茶屋を守り抜くという覚悟を形にしようと思いました。すでに周囲で廃業する茶屋が増え始めていたし、私も高齢者なのでいつ何があるかわかりません。ゆくゆくは子どもに継いでもらいたい気持ちもありますし、次世代にスムーズに引き継ぐには法人化した方がいいと考えました。
仕事は大変だし、利幅は薄い。でも、必要としてくれるお客さんはたくさんいるし、うれしいことの方が多い。存在意義のある仕事だと思っています。たくさんの激励のお電話やお手紙をいただいたことで、改めて気づきました」(小池さん)
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