「山の茶屋が消えていく…」 上皇陛下が訪れた老舗も直面する、"登山者の砦"の構造疲労
茶屋の乱立期を経て、長らく陣馬山頂は富士見茶屋、後発の信玄茶屋、清水茶屋の3軒が営業していたが、2020(令和2)年に再び変化が起きた。昭和初期から続く富士見茶屋が店を閉じたのだ。
「3軒共に代替わりしていたのですが、引き継いだ私たち世代もすでに高齢者です。陣馬山や景信山、小仏城山なども含めて高尾山周辺は日本で最も山の茶屋が多いエリアですが、ここ数年で4軒以上が休廃業しています。荷揚げは大変だし、費用をかけて老朽化した建物を改修しても利益が伴わないので、後を継ぐ人が見つからないようです」(小池さん)
一時は廃業も覚悟したが…
日本は国土の7割を山地が占め、そもそも茶屋が存在しない山がほとんどだ。登山者の中には「山の自然を楽しみに来ているのだから、茶屋なんかなくていい」という意見の人もいる。それでも小池さんは「茶屋はあった方がいいと思います」と訴える。
「休憩や水分補給ができる茶屋があることで、安心して山登りを楽しむ方は少なくないはずです。近年は気候変動の影響なのか、激しい落雷や集中豪雨、大粒の雹(ひょう)が降り注ぐことも増えています。うちはもともと避難小屋でしたし、悪天候時は営業をやめて登山者の皆さんに店の奥まで避難してもらっています」(小池さん)
また、近年は登山マナーが各段に向上したとはいえ、身勝手な犯罪行為に及ぶ者も存在する。信玄茶屋でも営業用のテーブルやイスが破壊され、燃やされてしまったことが何度もあった。
「数年前には流星群目当てで夜間に登ってきた人たちが店の資材で焚火をし、目撃した方が下山して通報してくれたのですが、警察が山頂まで登ってきた時は火を放置して逃げた後だったそうです。以降は火事が怖いので、定期的に茶屋周辺の草刈りもしています。標高が低い山でも避難小屋は必要ですし、登りやすい山ほど避難小屋が荒らされやすいので、やはり茶屋という形で日中だけでも営業をしているほうがいいと思います」(小池さん)
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