原発被害に悩む南相馬、医療再生の苦しい現実

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縮小

動き出したのは、雲雀ヶ丘病院だけでない。市内中心部にある小野田病院は市内の開業医の協力を得て、4月に内科と小児科で土日の夜間救急診療所を開設。南相馬市立総合病院も、原澤医師を含む医師3人体制で在宅診療部をスタートさせた。

深刻な看護師不足 東電の賠償縮小も懸念

とはいえ、医療再生は緒に就いたばかり。病院の実情は深刻だ。「最大の課題は看護師の確保だ」と小野田病院の菊池安徳院長は指摘する。子どもを持つ看護師の多くが町を離れたため、看護師不足を理由に市内では病床の半分以上が稼働できないままだ。そのため「原発事故後に転院を余儀なくされた患者さんの多くが市内に戻ることができない」(雲雀ヶ丘病院を運営する財団法人金森和心会の金森圭子常務理事)。

東京電力による賠償の縮小も懸念材料だ。多くの病院が立地する中心部の原町区では昨年9月末に「緊急時避難準備区域」の指定が解除され、小中学校も再開。インフラ復旧を理由に、政府の原子力損害賠償紛争審査会は今年8月末を目安に旧準備区域に住居があった住民の避難費用や精神的損害への賠償を打ち切ってもよいとする指針を発表した。

指針では病院など事業所への賠償について、「営業損害の終期は当面示さず、個別具体的な事情に応じて合理的に判断するものとする」としているものの、個別交渉の中で東電が払い渋る懸念も取りざたされている。南相馬の病院はいつ終わるとも知れない苦難が続いている。


(岡田広行 =週刊東洋経済2012年4月28日・5月5日合併特大号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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