今回も「押し目待ちに押し目待ち」となるのか、それとも「半年ぶりの下げ」となるのか、10月以降の相場を占う1週間がやってきた

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この時間分散型売却(時間軸での希釈)戦略で参考になるのが、戦後の昭和の証券不況時代に組織された、合同証券と日本証券保有組合の買い支えだ。

1965年~1967年の2年間で、市場から約2%の株を買い上げた。しかし、その買った株について、市場売却の条件が整うまで1968年~1975年の8年もの期間が必要だった。しかも売却を開始した1975年から、売却が完了する1985年までさらに10年を要した。

戦後不況時と同じく決定まで約10年、容易でない売却

今回の買い上げ期間は2013年~2021年の8年間に及んだため、東証プライム市場の時価総額に占める割合は約8%と、昭和の買い上げウエイトの4倍となった。しかし、売却条件が整うのに、2022年~2024年のわずか2年しかかからず、証券不況時に比べて極めて強い市場環境の中での出来事でもあった。

ただし、両者とも、合計してみると「入り口から出口の始まりまで10年」という時間軸が同じなのは、決して偶然ではない。「株式市場への公的介入の限界は10年」ということを意味するのではないか。

とにかく問題はこれからだが、「時間分散型売却(時間軸での希釈)戦略」は、かなり難しい。繰り返すが、売却ペースは上述のように、簿価ベースで年間 3300億円程度としているので、約112年かかることになる。

植田総裁は「最後まで見届けることはできないが、こういう基本方針をきちんと残しておくことによって後を引き継ぐ新しいボードメンバーが実行してくれると考えている」と述べたが、政策としてはあまりにも非現実的で、いずれ売却ペースは引き上げて来ると考えられる。

前述の83兆円の数字を使うと、10年で年間8兆3000億円(月間約6916億円)、20年として年間4兆1500億円(同約3458億円)となる。30年でも約2兆7666億円(同約2305億円)だ。

昭和の「買い上げ玉」は、1978年と1979年の名目GDP成長率それぞれ10.5%、12.1%を筆頭に、今とは比べ物にならない成長率だった。にもかかわらず、そうした高成長時代でも「評価益」を「実現益」に変える時間は10年を要した。現在の低成長時代で、市場への影響を小さくしながらの完全売却は無理と考える。

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