世界最大の中国自動車市場で起きつつある主役交代劇、『業界地図』最新版から見えたトレンドの変化

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中国の自動車市場は地場系新興メーカーの成長が牽引している。写真は2025年4~5月に開催されたオート上海(上海モーターショー)の様子(編集部撮影)

2024年の中国の自動車出荷台数は前代未聞の3100万台に達し、輸出台数も2年連続で世界首位を維持している。グローバル市場では電気自動車(EV)の過熱感が一服している一方、中国の自動車メーカーでは最新のSDV(ソフトウェア定義自動車)の勢いが増している。それと同時に、競争の軸は車両のコストや走行距離から、自動運転機能などを備える車の知能化へと移行しつつある。

中国国内で「内巻」と呼ばれている自動車メーカーの消耗戦が続く中、「作れば売れる」というガソリン車時代に成長してきた大手国有企業や外資系の合弁企業は劣勢を強いられており、中国の自動車業界には淘汰の荒波が押し寄せてきている。

国有企業主導のガソリン車時代

中国の自動車産業の幕開けは、1953年に設立された長春第一汽車(現・第一汽車)がトラックの生産を開始した時にさかのぼる。ソ連との戦争に備えるため、政府は内陸地域に第二汽車(現・東風汽車)などを設立し、その後も各地では多くの国有自動車メーカーが設立された。

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1978年に始まった改革開放政策以降、中国政府は外資系企業に国内市場の一部を開放する代わりに技術移転を求めるという、「市場換技術」方針を定めた。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は1985年、上海汽車と合弁企業を設立した。中国政府は当時、外資系との合弁事業による産業規模の拡大を重視するあまり、地場ブランドを育成しようとする意識は乏しかった。一方、1990年代半ばに登場した吉利汽車、長城汽車などの民間企業は、他社製品の模倣や部品の寄せ集めで自主ブランドを投入し始めた。

2008年のリーマン・ショック後に中国政府が公布した自動車産業振興計画では、「四大」(第一汽車、上海汽車、東風汽車、長安汽車)、「四小」(北京汽車、広州汽車、奇瑞汽車、中国重汽)」の計8自動車グループからなる自動車産業再編の方向性が明示された。中国の自動車生産台数は2008年にアメリカ、2009年には日本を抜いて世界首位となっており、自動車産業は中国のリーディング産業として位置づけられた。

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