世界最大の中国自動車市場で起きつつある主役交代劇、『業界地図』最新版から見えたトレンドの変化

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一方、当時の中国は「自動車大国」の地位を固めたものの、部品技術の遅れや研究開発力の弱さなどの課題を抱えていたため、日米欧に追い付くには依然遠い道のりがあった。しかし、電気自動車(EV)を中心とする新エネルギー車(NEV)なら日米欧の自動車メーカーとも差がなくなり、同じスタートラインに立てると政府は考え、NEVシフトに舵を切った。2017年4月に発表された「自動車産業中長期発展計画」では、世界の自動車業界及び部品業界のトップ10に入るような企業を数社育成して、2025年には世界の自動車強国の仲間入りを果たすことを目標に掲げた。そうした政策を追い風に地場メーカーは相次いでNEVの生産に乗り出している。

ファーウェイやシャオミなど自動車以外の企業も参入

新型コロナ禍以前の中国のNEV市場は、配車サービスカーやタクシーなど営業車向けのガソリン車モデルを電動化しただけのEVが大半であった。充電インフラの未整備や低品質の車載電池といった課題もあり、販売が伸び悩んでいた。

これを変えたのが、米テスラが上海市で2020年に生産し始めた「モデル3」が火付け役となった中高級EVブームである。さらに上海蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車、理想汽車など地場の新興EVメーカーもソフトウェアと通信機器を搭載し、自動運転補助機能やエンターテインメントなどを使いやすくしたSDVを投入した。

米テスラの中国生産を契機に、中国の新車販売に占めるNEV割合は2022年に約2割となり、初めてキャズム(広く普及する前の溝)を超えた。NEV市場が本格的な成長期に突入したことを察知し、スマートフォンメーカーのファーウェイと小米(シャオミ)が満を持して、2023年に自動車業界に本格参入した。

ファーウェイが2023年に打ち出した「鴻蒙智行(HIMA: Harmony Intelligent Mobility Alliance)」は、ファーウェイがユーザーインタフェースの設計・開発・部品生産を完全に担い、自動車メーカーが車体製造を手がけるビジネスモデルだ。小米が2024年にスマホのシステム開発の延長線として投入した最初のEVとなるSU7は完成度が高く、もはや「走るスマホ」といえるだろう。テック系の車両ではスマートフォンと同じシステムやアプリを動かすこともでき、知能化や乗車体験で勝負することを図っている。

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