倒産急増の焼肉業界で「焼肉きんぐ」が"一人勝ち"の理由とは?"食べ放題"だけじゃない魅力を現地レポと幹部取材で深掘り!都心出店の真意も聞いた

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しかしここのところ、その方針を転換。2022年からは浅草、川口など、首都圏の駅近立地への出店を進め、2025年6月には「新宿西口大ガード店」をオープンした。

今回、その狙いや今後の展望などについて取材した。

物語コーポレーション焼肉事業部・岩谷明弘事業部長(筆者撮影)

焼肉きんぐの特徴が、キャッチコピーの「お席で注文 食べ放題」。つまり着席スタイルで、客が料理を取りに行かなくて済む点だ。

この特徴について、物語コーポレーション焼肉事業部・岩谷明弘事業部長は次のように説明する。

「焼肉食べ放題のメイン客層は家族や友人同士のお客様。しかしブッフェ式にすると、せっかくお店に来ても、料理を取りに行く手間が発生し、ゆっくり会話や食事を楽しめない、ということになる。

席で注文のスタイルには、100分の制限時間いっぱい、家族や友達と食事を楽しむ時間に使っていただけるように、との意図を込めています」

「焼肉ポリス」が店内を巡回

そのほか、接客にも特徴がある。「焼肉ポリス」と称する従業員が店内を巡回し、網の交換、おしぼりの提供などを行うほか、肉の焼き方、食べ方、おすすめの食べ合わせ等のアドバイスをするのだ。ブランドでは「おせっかい」と呼んでいる。

客とのコミュニケーションによって差別化。店内を巡回する「焼肉ポリス」がサービスの担い手だ(撮影:今井康一)

食べ放題では人件費を減らすためブッフェにしているところも多いが、焼肉きんぐでは逆に、人によるサービスを充実させて差別化を図っているわけだ。

そのため従業員がサービスに注力できるようなシステムの構築には早期から取り組んできた。注文時のタッチパネルも2009年と早い段階で導入。

提携工場で肉を加工することによる店舗作業の低減、調理作業の分業化など、オペレーションの効率化も図ってきた。

近年では配膳ロボット、特急レーンの導入などのDXも進めている。レーンは出店や改装のタイミングで導入しており、今は約360店舗(2025年9月時点)のうち約40店にレーンが設置されている。

特急レーンは将来的な労働力不足や人件費アップの対策として重要。設置費用がかかるほか、店舗の形状によっては設置が難しい。設置数は約360店舗中40店舗というところ(撮影:今井康一)

岩谷氏によると、食べ放題では1席あたり平均15回の配膳が必要になる。レーンを導入することで調理場とホールを合わせて4〜7人分の労力をカットできるそうだ。

また、料理の提供スピードも早くなり、サービス品質、客の満足度向上にもつながる。

将来的な人件費高騰、労働人口減を見通しても、ブランド継続の鍵となるツールと考えているそうだ。

焼肉食べ放題の市場について岩谷氏に聞いたところ、厳しい見通しが語られた。

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