一方の智恵さんは脳梗塞で倒れた母と認知症を患っていた父をそれぞれ看取り、「一人になったから遊びに出かけよう」という気分だったと振り返る。九州にある元の実家に遊びに行ったり、アイスホッケーの試合を観戦したりと一人暮らしを満喫していた。そして、お盆や年末年始には地元に戻っていた健一さんから連絡が来た。
「彼女に特別な好意があったわけではありません。休みの間ずっと実家にいるのも嫌なので、独身で身軽な人にゴハンに付き合ってもらおうと思っただけです」
結婚して何年経っても、尊敬と興味が尽きない
2人きりで食事に行ってみると「すごく楽しかった」と健一さん。智恵さんの修業のような過去を初めて知り、「この人の人生って何なんだろう?」と衝撃を受けて、猛烈に気になり始めたと明かす。2回目のデートで「付き合ってくれ」と告白し、2カ月後には結婚するつもりだと親と妹に伝えた。結婚はもうこりごり、ではなかったのか。
「うまく言えませんが、この人とは結婚したいなと思ったんです。ちゃんとしたいな、と」
智恵さんは急な展開に驚いた。しかし、健一さんは揺るぎなかった。結婚して6年目になる今でも智恵さんへの尊敬と興味を隠さない。
「僕とは違って妻は読書家で、僕が知らない世界を知っています。取材を受けるなんていう今日みたいな機会も面白いですね。人当たりがいいところもすごいなと思っていて、この人が何かやるときは力になってあげたいと思うんです」
健一さんも趣味人で、特に好きなのは車をいじること。外からはほとんど見えないパーツを塗装したりして悦に入っている。
「僕の趣味にも妻は理解を示してくれますし、否定や口出しはしません。そんな距離感を含めて心地よく感じています」
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