「暫定税率廃止、ガソリン代安くなるぞ!→ハイ、走った分だけ課税ね」になる? いま話題の「走行距離課税」、どのみち実現不可能と感じるワケ
なにぶん、石油連盟・石油元売にとってエコカーは「ガソリンを使わず税金負担もガソリン車に押し付けるクルマ」であり、こういった格差を是正したいのだろう。
ただ、このタイミングで導入するとなると、暫定税率廃止で「ガソリンが安くなる、わーい!」とはしゃいでいた人々に、形を変えただけの「走行距離課税」という氷水をぶっかけるようなもの。あまりの間合いの悪さに「暫定税率を景気回復につなげる気、あるのかな?」と呆れるのは、筆者だけではないだろう。
ただ、実際に走行距離課税を導入するにしても、現段階で「実現は不可能じゃないのか?」と、感じざるを得ない。ここからは、走行距離にして1日300~400Kmも走行する営業マン・会社役員であった筆者の立場から、「実際に導入された場合、別の格差が発生してしまいそうな」事態を予測していく。
「走行距離課税」の影響を受けるのは地方だけではない
何をするにもクルマは必要で、長時間ハンドルを握りがちな地方と、あまり運転の必要がない都市圏。走行距離に差が出る分、地方と都市圏で払う税額に差も出る。これが、経営基盤が脆弱な企業が多い地域の、経済崩壊につながるのでは? こういった懸念が、「走行距離課税」ではよく持たれがちだ。
ただ、実際に影響を受けるのは地方だけではない。一定以上の長距離輸送を長大貨物列車に頼るアメリカなどと違って、自給率が極端に低く、近郊からの距離が中途半端すぎて鉄道・フェリーへの振り替えが利かない東京・首都圏近郊や、多くの生活物資を中四国・九州に頼る大阪は、トラックの負担増による値上げラッシュを、殊更に食らうだろう。

また、おそらく企業の規模ごとに、負担額に差が出る。47都道府県に拠点を持って地域内で物流・輸送を完結できる大手企業と、拠点が2、3カ所しかない中小企業では、走行距離も違うのは当然の話。三重県四日市市・広島市・福岡県苅田町などの工業地帯にそれぞれ事業所を持つ会社と、大阪にしか拠点がなく「あぁ、行ってきてね~」となる中小企業では、走行距離に違いが出るのは当たり前だ。
地方の零細業者の場合は、こういった負担増がきっかけで「会社ごと閉めてしまう」可能性も否定できない。

ただ、さまざまな業界団体や有識者から「対:都市圏や長距離で納税の係数をかければ」という提案がなされている。これで、納税の不公平感も解消される……この場合、別問題である「新たな格差」が生じるだろう。
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