面接の内容によっては採用を辞退することもあり、自分とマッチする学校に出会うのはなかなか難しいそうだ。
「例えば、ひとくちに『楽しい学校』といっても描く絵はいろいろです。鉄道の線路のように、教員がしっかりとレールを敷いて、その上を子どもたちが安心して歩いてゴールできることを『子どもにとって楽しい』と考える人もいれば、船の航路のように、ゴールまでの道のりを状況によって変えながら、そこに安心できるサポートがあることを『子どもにとって楽しい』とする人もいます。
何校か経験してみて、お互いが思い描く絵を知らなければ、自分の教育観と合う学校を見つけることも、学校を変えようとすることもできないのだと実感しました。校内で教員同士の対話時間が増えれば、同僚や校長もまじえて深いコミュニケーションができそうなのに、やるべきことが詰まりすぎてそうした時間が取れないのも問題だと感じます」
自分で勤務先を選択する、という働き方
若村さんは、勤務先や働き方を「自分で選べる」という理由で、あえて臨任教員としての勤務を選択している。プライベートとのバランスも考えて、通いやすい地域から学校を選べることもメリットだ。
「腰を据えて働きたい人や、長年同じ学校で働くことが苦にならない人にとっては、あえて臨任教員になる必要はないかもしれません。しかし、1年でリセットできるのがよい切り替えになるケースもあるでしょうし、いろいろな事情で働き方に制約がある人もいるでしょう。そうした教員にとってもいい選択肢だと思うのです。『担任がやりたい』『専科がやりたい』などの要求はしてみることをおすすめします。たしかに待遇面は正規の教員より下がりますが、それもこうした要求や“選択の自由”を得ているからだと、私は捉えています」
もちろん、若村さんの教育に対する熱意や心構えは正規教員のときと変わらず、真正面から子どもたちと向き合っている。
「自分の人生、何を大事にするか考えることが大切です。今になって感じるのは、正規教員の頃は無意識に『いろいろなものを背負っていた』ということ。知らぬ間に校風やしきたりに縛られて、自分の信じる教育を実践できていませんでした。ほかにも、通勤時間の長さや育児との両立に疲弊して学校を去らざるを得ない教員がいることにはもどかしさを感じます。選択肢は『辞める』か『しがみつくか』の2択ではありません。まずは教員自身が元気であることが大切ですから、臨任教員になるという選択肢がもっとポジティブに広まればいいなと思っています」
正規教員から臨任教員へーー。若村さんは、より自分を活かせる働き方を求めてこの道を選んだ。臨任教員は決して消極的な選択ではなく、自分の理想や教育理念と合致した職場で働くことができる、そんな魅力的な選択肢として捉え直すこともできそうだ。
(文:藤堂真衣、注記のない写真:SoutaBank / PIXTA)
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