台湾TSMCの「国宝級」2ナノ技術流出で3人をスピード起訴――東京エレクトロンを襲う"3つのショック"、主犯の元社員に懲役14年を求刑

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事件発覚を受け日本のSNS上では、「東京エレクトロンには動機がない」「中国の陰謀」といった意見が目立っている。だが起訴を受けて明らかになった捜査事実を踏まえれば、犯行は東京エレクトロンの業務と深い関係があることは否定できない。

捜査当局はリリースで「関連する法人や個人が刑事責任を負うか否かについて、引き続き別の事件として捜査を進めている」と明らかにしている。「関連する法人」から東京エレクトロンが免れるはずはなく、現在まさに企業への捜査が進行している――という事実が、3つ目のショックである。

TSMC「当局と緊密に連携する」

この事件を発覚以前から取材している台湾の大手新聞記者は、「もし犯行が個人によるものではなく背景に企業の関与があるなら、元社員たちは進んでその事実を明らかにするだろう。そうすれば個人としての罪が軽くなり、量刑が少なくなる余地がある」と指摘する。

台湾の国家安全法は、核心的重要技術の海外流出をした者でも捜査や裁判の中で自白をし、他の共同犯行者の検挙に繋げた場合は、自白した者の刑を減軽・免除すると規定しているからだ。

また同法は、犯行者が企業従業員だった場合はその人物を雇用していた企業にも責任を求め、罰金を科すとしている。この適用が除外されるのは、企業の代表者が犯罪の発生に対し、力を尽くして防止を図っていた場合とも規定しており、東京エレクトロンについても防止措置が捜査上の一つの論点になるとみられている。

今回の起訴を受けTSMCは筆者の取材に対し、捜査において核心的重要技術に関わる12ページ分の情報が発見されたと明かし、「企業秘密の保護や企業利益を損なう行為は一切許容しない」「必要に応じて関連する規制当局と緊密に連携する」とコメントした。事件の展開は、予断を許さない状況だ。

杉本 りうこ フリージャーナリスト

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すぎもと・りゅうこ / Ryuko Sugimoto

神戸市出身。北海道新聞社記者を経て中国留学。その後、東洋経済新報社、ダイヤモンド社、News Picksを経て2023年12月に独立。台湾の経済誌『財訊』の日本特派員。

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