台湾TSMCの「国宝級」2ナノ技術流出で3人をスピード起訴――東京エレクトロンを襲う"3つのショック"、主犯の元社員に懲役14年を求刑

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実は捜査当局がこの事件について東京エレクトロンという企業名に公式に言及するのは、これが初めてだ。今回の起訴対象はあくまで元社員個人であり東京エレクトロンは含まれていないが、犯行の背景に業務が関係していることから、企業名にも言及したとみられる。

2つ目は、事件が東京エレクトロンのビジネス上の「泣き所」と直結していたことだ。捜査当局の発表によると、主犯の元社員はTSMCから窃取した情報を使って、東京エレクトロンの「エッチング装置」の性能を改善し、TSMCの2ナノ量産ラインで自社のエッチング装置がより多くの認証を獲得できるよう活用したという。

東京エレクトロンは半導体製造装置で世界4位、国内最大手の有力メーカーである。特にコーター/デベロッパと呼ばれる塗布現像装置は世界シェア9割を誇り、TSMCもこの装置については東京エレクトロン以外に選択肢がない。

エッチング装置の改善に利用

一方、チップに回路形成する工程で使われるエッチング装置については、世界シェア2位ではあるもののアメリカのラムリサーチに水をあけられ続けている。

半導体業界のあるコンサルタントは、次のように指摘する。「エッチング装置において、ラムリサーチとの技術力の差が埋められない。エッチング装置が厳しく業績の重しになっているというのが、業界における共通認識だ」。エッチング装置は東京エレクトロンの新規装置売上高の3割以上を占めるため、ここの動向は業績を大きく左右する。

今回の事件で主犯の人物は、エッチング装置の性能を改善することにTSMCの営業秘密を利用したという。これが個人の犯行に留まるのか否かは、今後の捜査と公判の結果を待つしかない。

だが現時点で指摘できることは、元社員の犯行は東京エレクトロンの経営において利益をもたらすものであったという点だ。台湾の捜査当局だけでなく、TSMCも経営として東京エレクトロンに対して強く責任の有無を追及することになるだろう。

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