≪神戸女性刺殺事件≫“次の被害者”を生んだ司法判断 前回事件で住居侵入・首絞めの谷本将志容疑者(35)はなぜ見逃された?
2022年以降、谷本容疑者に対しては、科学的なリスク評価とこのルールに沿った監督・介入が講じられていなかったのは明白だ。
具体的には、(1) 科学的リスク評価ツールを用いたリスク評価、(2) リスクに応じた保護観察や接近禁止命令といった監督措置の実施、(3) 認知行動療法やストーカー治療プログラムなどの治療的介入の実施を保護観察下で行うべきだった。
執行猶予のあり方は見直されるべき
今回の事件が示すのは、感情的な「刑が軽すぎた」という非難ではなく、科学的妥当性を欠いた評価・処遇設計の問題である。量刑判断においては、科学的リスク評価ツールを導入し、その結果に基づいて保護観察・治療的介入・違反時対応を組み合わせるべきだ。
執行猶予は「寛容」ではなく、「条件付きの社会内処遇」として再設計される必要がある。そして、高リスクかつ遵守不良が予見される場合には、実刑や刑務所内での集中的治療を選択すべきだ。
神戸事件は、法的・形式的には「妥当」とされる量刑が、実質的には再犯防止の観点から不十分であったことを示す不幸な実例となってしまった。
科学的リスク評価の精度と治療的介入の有効性を踏まえ、犯罪心理学の知見に基づく監督・介入を量刑判断に組み込むことが、再発防止と公正な司法の両立に不可欠である。現代の司法において、もはや科学的手法の導入は避けて通れないものである。
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