大地震が発生したとき、避難に鉄道は使えるのか 「動かすべきだったのでは」と鉄道会社社長
従来、そうした輸送には自動車と航空機のみが使われていたが、ここに鉄道を活かせないかという発想になった。被災地は渋滞が激しく自動車は時間が読みづらい。ドクターヘリや自衛隊の航空機での輸送についても人数が限られる。ここに鉄道が持つ高速・大量・定時輸送の特性が活きると考えられている。そして、技術面、政策面から鉄道利用が有効であるかを研究するためにRail-DiMeC研究会が立ち上げられた」とその目的を説明する。
震災について山田氏は説明する。「2024年1月1日に発生した能登半島地震では、医療ケアが必要な患者が、被災地近隣の病院に搬送されたものの、近隣病院の負荷が高まった。1995年の阪神・淡路大震災では、病院が壊滅的なダメージを受けたところに大量の傷病者が発生した。どこの病院も普段から受け入れに余裕があるわけではなく、ひとたび災害が発生すれば、周辺の病院だけではなく輸送にあたる医療スタッフなどにも大きな負担がかかることから、鉄道を活用してより離れた病院に患者を分散させることができれば、患者の受け入れ数を増やすことができるとともに関係者の負担軽減にもつながる可能性がある」。
災害から1〜2日で鉄道は運行再開
災害で線路が破壊されれば鉄道は使えないのではないかという反論についても、山田氏は「能登半島地震では2日後に旧北陸本線が全線再開し、阪神・淡路大震災の際には、翌日には激甚災害地の近くまで鉄道の運行を再開できている。Rail-DiMeCでは鉄道が運行できる最前線で条件を満たす駅を医療搬送拠点とし、ここから鉄道で大量搬送を行うことを想定している」という。
2023年11月、兵庫県による近畿地方ブロックDMAT訓練では、神戸市営地下鉄海岸線で実際に4両編成の鉄道車両を用いて、DMAT(災害派遣医療チーム)スタッフと模擬患者30名が参加した。この際、1号車では、Rail-DiMeC研究会が簡易手術台や医療機器を搬入し、病院列車の実証実験を行っている。実際に海岸線の本線を2往復し、同乗の外科医が、程度が比較的軽い患者の搬送中の外科処置が可能であることや、搭載した医療機器が問題なく稼働できることを確認したという。
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