広島で話題の路面電車にも「2つの問題点」がある 世界水準には程遠い「これはLRTではない」

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海外では半世紀以上も前の1960年代後半から、全券種(つまり、全乗客)に「セルフ乗車」を採用している。セルフ乗車とは広島のMOBIRY DAYSの扱いのように乗務員は運賃収受に関わらず、乗客の自律的セルフサービスに委ねる方式である。わが国では「信用乗車」と呼ぶことが多いが、これは誤訳だ。セルフ乗車によってワンマン運転でも全扉で乗降できて、利便性、速達性、定時性、大型車両の使用による輸送力と乗務員の生産性が向上した。

このような路面電車はLRT(Light Rail Transit)と呼ばれ、世界中で活躍している。LRTではベビーカー、高齢者を多く見かける。それは、乗った扉から降車できて「車内移動というバリア」がないこと、大型車両を使用してベビーカーの置き場、座席が十分に設けてあるからだ。

新ルート開業を祝うヘッドマーク(筆者撮影)

併用軌道での路面電車優先通行は世界標準

改善を要する第2の点は、電車の優先通行(電車レーンの確保と交通信号の電車優先制御)の徹底実施だ。海外では、停留所間で不時停車することはほとんどない。

駅ビル乗り入れの新ダイヤで快速運転の実証実験(本年末まで)が始まった。平日朝間の広島駅発の2本が広島駅―紙屋町東間の5つの停留所のうち3つを通過して1分短縮する。

しかし、この区間のうち稲荷町―紙屋町東間は停留所が多く(平均間隔240m弱)、交差点も多く(平均間隔100m弱)、しかも、電車ダイヤは稠密だ。このため、多数ある交通信号機によって、時には右折車によって、あるいは先行電車に追いついて停留所間で不時停車を余儀なくされることがある。

停留所間隔の適正化(統廃合)と交差点の削減(電車通りと小さい通りとの交差点は、電車通りからは直進と左折のみ、小さい通りからは左折のみとする)、そのうえで残った交差点の交通信号の電車優先制御が必要だ。この点が実証実験の結論のポイントであろう。

戸口から戸口への所要時間では、路面電車利用はマイカーに負ける。だから、併用軌道区間では路面電車は優先走行を徹底して競争力を高める必要がある。

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