リビアの凶悪な独裁者が、自らの本拠地に何キロメートルにも及ぶ地下トンネルを掘らせた理由
実のところ独裁者になるということは、降りられないランニングマシンの上で走り続けるようなものなのだ。彼らはその立場上、「穏やかに辞任する」という出口戦略を持ちえず、常に脅威にさらされている。
独裁者は自らを支える側近たちを飼い慣らさなければならない。そして、彼らの非道な行動の背後には、裏切りや暗殺、叛乱への恐怖がある。
今回、政権のパワーゲームという視点で独裁制を読み解く『独裁者の倒し方:暴君たちの実は危うい権力構造』より、一部抜粋・編集のうえ、お届けする。
独裁者を苦しめる失脚への恐怖
地上最強の独裁者たちは、恐怖におびえながら生きることを運命づけられている。
彼らはたしかに、パチンと指を鳴らすだけで敵を葬り去ることができる。豪勢な宮殿や邸宅で一族や配下の者たちとともに、一国全体を意のままにすることができるが、目覚めている間は、何もかも失うかもしれないという恐れが常に頭を離れない。
彼らはどれだけ強力になろうと、お金や命令ではその恐れを退散させることはできない。それらの独裁者は、1歩間違えただけで失脚する。そして、失脚した独裁者は、亡命したり、投獄されたり、命を落としたりすることが多い。
2007年末のある寒い冬の日にパリ中心部のマリニー邸で、緑色の迷彩服を着て周辺を警備していたアマゾニアン・ガード(女性ボディーガード部隊)が、安全確認を済ませた。
するとその直後、ムアンマル・カダフィ大佐が姿を現した。入り口の段を下りた彼は、手入れの行き届いた芝生に敷かれたレッドカーペットの上を歩いていった。
カーペットの先には巨大なテントが用意されていた。フランス政府が国賓の宿泊施設として使うマリニー邸は、絶大な権力を持つ支配者たちの気まぐれに応じることには慣れていたが、来訪中の独裁者が「砂漠の伝統」に則って訪問者たちを接見できるように、庭にベドウィンのテントを設営したことは、かつてなかった。




















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