
アムステルダム市内の水上の家(写真:Water Studio提供)
近年の豪雨災害や内水氾濫の頻発により、都市に暮らす私たちの「移動」や「避難」も見直しが迫られている。日本各地で発生している甚大な水害を軽減するのに有効な策の1つが「浮く」ことだ。
浮くことは環境変化に適応し続けられる暮らし方の1つ。その視点で日本を見渡すと、すでにいくつもの「浮く技術」が萌芽していた。本稿では前後編の2回に分けて、住宅、自動車、そして人間について「浮く技術」の最前線をリポートする。
後編:水難事故をめぐる危険な《3つの思い込み》とは? 水害から"命の時間"を稼ぐ「浮く道具」の最新技術
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なぜ巨大な建物が水に浮かぶのか
ヨーロッパ北部に位置するオランダは、国土の4分の1が海面下にある。最も低い地点は海抜マイナス6.76メートル。浅い海を干しあげ、ポルダーと呼ばれる干拓地を作ってきた歴史は、「世界は神がつくったが、オランダはオランダ人がつくった」という自負につながっている。
だが、「水との戦い」が国家的なテーマであり続けた。堤防や水門、水車の発展とともに、水と共に生きる知恵を積み重ねてきたこの国には、西暦900年から1900年の間に124回もの大規模な水害の記録が残る。近年では1995年の洪水によって25万人が避難を余儀なくされ、さらに地球温暖化と地盤沈下の影響で、水害リスクは再び高まりつつある。
そうした中で発想の転換が起きた。「水を押し返す」のではなく「水に浮かぶ」こと。アムステルダムではすでに運河に浮かぶ住宅やヴィラが実現しており、建築家コーエン・オルトゥイス氏はさらなる構想として「水に浮かぶ都市」を提案している。
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