バズる投稿、実は選挙戦略?"SNSが変える"参議院選挙――どんなメリットがあり、どんなことに注意を払う必要があるのか?
背景には、政治的な動機だけでなく、「アテンション・エコノミー」、つまり“注目を集めることでお金が稼げる”という仕組みもある。
選挙は注目を集めやすく、ウソでも扇情的な投稿をすれば閲覧数が増え、広告収入が入る。そうした投稿がアルゴリズムにより優遇されてしまう。
この問題に対しては、選挙期間中の「マネタイズ規制」が1つの対策として注目されている。たとえばYouTubeやTikTokで、選挙関連コンテンツの広告収入を制限することで、あおり投稿の動機を減らそうという試みだ。
収入が得られずとも表現は可能なため、表現の自由と両立する。
ただし、何を“選挙関連”と定義するのか、どの選挙まで対象とするのか、技術的に可能なのかなど、課題も多い。
一方、マスメディアの責任も重い。フェイク情報が飛び交うなか、テレビや新聞はそれを正す最後の防波堤であるべきだ。しかし現実には、兵庫県知事選でも、誤情報に対する積極的なファクトチェック報道はあまり見られなかった。中立性を守ろうとするあまり、核心に踏み込めない――そんな空気が報道現場には漂っている。
SNS時代におけるメディアの使命とは何か。
単に「公平に伝える」だけでは足りないのではないか。誤情報が出たときにいち早く検証し、わかりやすく伝える力が求められている。しかもそれを、紙面や放送にとどまらず、SNSや動画などで、皆に届きやすい工夫をして行っていく必要がある。
「1人ひとりの姿勢」が重要
制度も報道も重要だが、結局、最後に問われるのは「私たち自身の情報との向き合い方」である。
まずは、「自分もフェイク情報にだまされるかもしれない」という謙虚さを持つこと。筆者の研究では、フェイク情報を見聞きした人のなかで、その情報が誤っていると適切に判断できている人は、たったの14.5%だった。しかも、批判的思考に自信のある人ほど、かえってフェイク情報にひっかかりやすいという傾向が確認されている。
自分は大丈夫、という思い込みこそが落とし穴なのだ。
次に大切なのは、「ひと呼吸おく」こと。SNSで見た情報にすぐ反応するのではなく、「これは誰が発信しているのか?」「意図は?」「他のメディアではどう扱われているか?」といった視点で考えてみてほしい。
そして、「反射的な拡散」を控えること。
SNSにおける1つの“いいね”やリポストが、誤情報を世の中に広めるきっかけになりかねない。少なくとも拡散したくなったときだけでも、情報検証することが大切だ。
20日の参議院選挙は、まさに分岐点である。SNSがもたらす光と影、その両方を正面から見据え、より成熟した民主主義へと進めるかどうか。私たち1人ひとりの選択が、未来のかたちを左右する。
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