バズる投稿、実は選挙戦略?"SNSが変える"参議院選挙――どんなメリットがあり、どんなことに注意を払う必要があるのか?

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かつて政治の話題は、家のテレビから、あるいは新聞記事から「受け取るもの」だった。しかし今は違う。選挙情報はスマートフォンの中にある。

SNSのタイムラインで誰かが発信し、それを誰かが引用し、ときに炎上しながら広がっていく。もはや、私たちの日常と政治の距離は、スマホ1台ぶんにまで縮まった。

SNSの“空気”が票に影響を与える

筆者は、2024年を「SNSと選挙の転換点」と位置づけている。それ以前の日本では、SNS上の言論と現実の投票行動が乖離するケースが少なくなかった。

たとえば、2020年の東京都知事選。

当時、SNSでは小池百合子氏への批判が目立った。にもかかわらず、ふたを開けてみれば小池氏が圧勝した。SNSでの意見と実際の社会の意見分布や投票行動には大きな乖離があったのである。

だが4年後、状況は一変した。インフルエンサーが投稿した動画が数十万回再生され、SNSで注目を集めた候補がそのまま票を集める。そんな場面が相次いだ。言い換えれば、SNS上でつくられた“空気”が、現実の選挙結果に直結しはじめたのだ。

アメリカでは2016年の大統領選挙で、SNS上の情報が選挙結果に大きな影響を与えたとされる。また2008年にはオバマ元大統領が、YouTubeを戦略的に活用して勝利した。

そこから遅れること約10年。日本でも民主主義においてSNSが大きな力を持つようになったといえる。

ただし、すべての選挙でSNSの影響が均等に表れるわけではない。

知事選や市長選のような「1人を選ぶ」構図のある選挙では、対立軸が明確でSNSでも議論が過熱しやすい。一方、参議院選のような複数人を選ぶ制度では争点が見えにくく、SNSの盛り上がりも拡散的になる傾向がある。

それでも、2024年の出来事ははっきりと私たちに示した。SNSを通じた選挙キャンペーンは、もはや“オプション”ではなく“前提”になったのだ。

SNSが政治参加の間口を広げているのは、確かな変化だ。兵庫県知事選では、前回と比べて投票率が約15ポイントも上昇した。SNS上で選挙に関心を持った人々が、投票所へと足を運んだことが一因となっているのだろう。

しかしその裏で、深刻な問題も浮かび上がっている。

第一に、SNSの構造上、過激な言説が拡散されやすい。丁寧な政策議論よりも、鋭い言い回しや断定的な主張のほうが“バズる”。すると、論点がねじ曲がり、イメージだけで候補者が評価される場面も生まれてしまう。

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