「謝罪の場でなぜピンク色のジャケット?」伊東市・田久保真紀市長の会見に抱いた“強烈な違和感”…ピンクが伝えるメッセージは?

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ピンクは、個人の好みではなく、女性議員たちの団結や連帯、政治的な意思を象徴する「メッセージの色」として機能した。場の目的や集団のメッセージと結びついたことで、むしろ「強い意志」や「結束の力」を表現する手段となった好例である。

さらに、司法の現場でも、ピンクを意図的に活用した事例がある。アメリカ・テキサス州の弁護士キャスリーン・マルティネス氏は、「女性らしさが専門性を損なう」といった固定観念に抗し、全身ピンク色の装いをあえて打ち出した。

彼女にとってピンクは、画一的な専門職イメージに埋もれることなく、自身の姿勢や価値観を明確に示すためのシグナルでもあった。柔らかさと知性を同時に伝える色として、ピンクはここでも単なる好みではなく、専門家としての立ち位置を視覚的に表現する手段として機能している。

どんな色も、選び方次第で力を持つ。問題は色そのものではなく、「その場にふさわしいかどうか」なのだ。つまり、色そのものが悪いのではなく、それが語られる場の文脈と当人の態度が合っているかが問われる。

説明責任や謝罪をする場では、視覚的に自らの立場を明確にし、発言と外見の整合性を保つことが、信頼回復への条件となる。

会見は「自分がどう見られるべきか」を意識

「視覚情報」の影響力は、情報過多の現代において、かつてないほど高まっている。発言の一部だけが切り取られ、文脈から切り離されて拡散されることも珍しくない今、見た目の印象は、信頼性だけでなく、発言の意図や重みまでも左右しかねない。

こうした時代において、服装は単なる装いではなく、自身の立場や姿勢を視覚的に示す不可欠な手段となっている。

また会見は、情報を伝えるだけではなく、「今、自分がどう見られるべきか」に対する高度な自己管理力が求められる。

今回の田久保市長のケースでは、「色が伝える印象」ひとつで、発言の真剣さや誠実さの受け止められ方が大きく左右されることを、あらためて浮き彫りにした。

これは政治家に限らず、あらゆる立場の人にとって無関係ではない。発言の信頼性を支えるのは、言葉だけではなく、それをどう表現するかという外見や態度の一貫性である。視覚的な選択が「信頼」の入り口となる今、そこに込められた非言語メッセージを軽視することはできない。

安積 陽子 ニューヨーク州立ファッション工科大学主任講師/国際イメージコンサルタント

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あさか ようこ / Yoko Asaka

国際ボディランゲージ協会代表理事。

アメリカ合衆国シカゴ生まれ。ニューヨーク州立大学イメージコンサルティング科卒業後、Protocol School of Washingtonにて国際プロトコール資格を取得。ニューヨークを拠点にエグゼクティブ、政治家、起業家を対象としたイメージコンサルティングを手がける。

現在はニューヨーク州立ファッション工科大学(Fashion Institute of Technology)にてイメージコンサルティングコース主任講師を務め、世界各国の受講生に教育を行っている。政治家、アナウンサー、文化人、実業家に対するイメージ戦略コンサルティングも手がけ、最新のインプレッションマネジメント手法を提供。

企業や医療機関に向けた非言語コミュニケーション・ボディランゲージ研修、イメージ戦略に関するコンサルティングや講演、執筆活動にも幅広く取り組んでいる。

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