ソフトバンクもついに「空飛ぶ基地局」実現へ。大手4社が挑む「空からつながる携帯」の激戦

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北緯36度に位置する日本は、赤道付近と比べて太陽光発電の条件が厳しい。飛行機型で年間を通じて飛行させるには、まだ技術的なハードルが残っていた。一方、ヘリウムガスの浮力を利用する飛行船型なら、太陽光に依存せず長時間の滞空が可能だ。

2026年は災害対策、2027年から本格展開へ

ソフトバンクのHAPSは、段階的な展開を予定している。2026年のプレ商用サービスでは、災害対応に特化する。大雨や土砂崩れで道路が寸断され、孤立した地域でも、上空から即座に通信を届けることが目的だ。

宮川社長は、すでに日本上空での飛行許可を取得済みであることを明かし、「7月にアメリカでの最終試験を行い、サービス提供の準備に入ります」と具体的なスケジュールも示した。

初期段階では限定的なエリアで10日間程度の運用を想定し、技術実証を兼ねる。主に社内での運用実績づくりが中心となるが、実際に大規模災害が発生した場合には、被災地域に限定してサービスを開放する可能性もあるという。通信仕様は2.1GHz帯のLTEを採用。5G対応も技術的には可能だが、災害時を考慮すると普及率100%に近いLTE端末への対応を優先した。

2027年以降の本格商用化では、全国の災害に数時間以内で対応できる体制を目指す。最低2機のHAPSを運用し、平常時には離島や山間部のデジタルデバイド解消にも活用する計画だ。

運用拠点は国内1カ所に新設する予定で、発着場と格納庫を含む施設となる。既存空港の活用は困難と判断し、新たな用地取得を進めている。ヘリウムガスの管理には徹底した温湿度コントロールが必要で、高圧ガスを扱うための厳格なプロトコルも整備する。

Sceye社のHAPS機体が格納庫に入る様子。同様の格納庫を国内で建設する(Sceye社提供)

料金については「災害対策は通信事業者の責務」との考えから、基本的に追加料金は徴収しない方向で検討している。地上基地局と同等のサービス提供を目指すという。

HAPSがカバーできるエリアは直径200キロメートル。地上基地局の3~10キロメートルと比較すると、その差は歴然としている。ソフトバンクは将来的にドローンや空飛ぶクルマを含めた3次元ネットワークの形成を視野に入れている。

2026年から2027年にかけて、日本の通信環境は大きく変わりそうだ。山でも海でも、災害時でも、携帯電話がつながる。それが当たり前になる時代が、もうすぐやってくる。

地上・成層圏・宇宙の3層ネットワークを効率的に組み合わせることで、真の意味での「つながる社会」が実現する。航空法や電波法など、既存の枠組みでは想定していなかった技術への対応も求められる。

ソフトバンクのHAPSプレ商用化まで、あと1年。日本の通信インフラが、また一つ進化を遂げようとしている。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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