日立の新たな目標「鉄道売上高2兆円」達成の条件 国内で断トツ、世界でも存在感増すが死角は?
事業構造も変貌した。かつての日立の鉄道事業は車両が事業の中心だったが、今や車両43%から信号・制御57%と、信号・制御の比重のほうが高くなった。今回のタレスの交通システム事業買収でも同じことが期待できる。
たとえば、日立は2024年12月にドイツ鉄道と制御システムやデジタル技術のフレームワーク契約を締結した。タレスの交通システム事業はドイツに製造拠点を持ち、ドイツ向けビジネスには強みを持つ。さっそく買収効果が現れたといえる。
市場環境も追い風だ。日立は今後の鉄道市場は年4%ずつ成長し、2023年の9.8兆円から2030年には12.6兆円に達すると見ている。とくに信号・制御市場は車両を上回るペースで伸びると予測している。とりわけ近代化、デジタル化の需要が拡大しているという。
今は世界5番手だが「独自の武器」
アメリカでビジネスを行う製造業はトランプ関税もリスク要因となるが、目下のところ、うまくかわしている。
2021年3月にアメリカ・ワシントンDCの交通局と地下鉄車両を最大800両製造する契約を結んだ。契約額は最大22億ドル(約3200億円)というビッグビジネスだが、車両製造のための工場をメリーランド州に建設し、工場フル操業後は日立の直接雇用460人を含む1300人の雇用を創出するとした。

2024年7月には南東ペンシルベニア交通局向けに200両製造する契約を結んだ。契約金額は7億2430万ドル(約1050億円)。これもメリーランド州の新工場で製造する。
これらの車両製造契約の大半は製品に一定割合のアメリカ製の部品や素材の使用を求めるバイアメリカン法の対象となっているが、「生産の約7割がバイアメリカン法に準拠している」とマリノ氏が説明する。
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