日立の新たな目標「鉄道売上高2兆円」達成の条件 国内で断トツ、世界でも存在感増すが死角は?

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日立はさまざまな事業部門でルマーダを展開しているが、現場のデジタル機器から集めた顧客データを、AIを使って分析し、得られた新たなデータやノウハウを現場にフィードバックして現場の機能をさらに高度化させるというサイクルが最も先行しているのは鉄道事業におけるエイチマックスであるとして、エイチマックスをエナジー事業やインダストリー事業などほかの事業にも展開していく。

その意味では鉄道事業は事業規模もさることながら、全社への貢献という点でも戦略的な重要度が増している。鉄道事業はこれまでほかのセクターと合算されて開示されてきたが、今期から「モビリティ事業」として単独のセクターとして開示されるようになったのがその証左だ。

ジュゼッペ・マリノ 日立
「フレッチャロッサ1000」の運転席に座る、日立の鉄道事業を率いるジュゼッペ・マリノ執行役専務(記者撮影)
【写真をもっと見る】日立がイギリスで高評価を得るきっかけとなった高速車両「クラス395」やハワイ・ホノルルの自動運転電車、イタリア向けの近郊用車両など、世界各国で走る日立製の車両

「ルマーダ」と鉄道の親和性

将来的にはルマーダの売り上げ比率を80%まで高めたいというのが日立の戦略である。ルマーダと親和性が低い事業は再編の対象となるという。

では、日立の鉄道ビジネスのルマーダ比率が80%まで高まったとき、車両製造のようなルマーダになじまない事業は切り離されるのだろうか。日立広報に尋ねると「それはない」と言下に否定した。

将来の車両がインテリジェント化され、インテリジェント化された車両の製造はルマーダがかかわってくる。また、車両だけでなく、信号・制御など鉄道事業のほとんどがルマーダに関係するビジネスになるのだという。こんな未来が実現すれば、確かに車両や信号の故障は減り、列車運行の安定度は高まるに違いない。鉄道にとってはバラ色の未来だ。

日立は新規路線にはエイチマックスを組み込んだ状態で売り込んでいく。しかし、日本国内には新規路線計画はあまりない。では、既存の路線でエイチマックスを採用しようという動きがどこまで出てくるか。鉄道事業者にとってはエイチマックス導入により長期的にはコスト削減効果が得られたとしても、導入初期の段階ではコストが先行するかもしれない。経営の厳しい鉄道事業者にとっては思案のしどころだ。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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