日立の新たな目標「鉄道売上高2兆円」達成の条件 国内で断トツ、世界でも存在感増すが死角は?
世界のライバル勢の売上高を見渡すと、最大手の中国中車(CRRC)はおよそ5兆円、アルストムは3兆円、シーメンスのモビリティ事業は1.9兆円。主に機関車を製造するアメリカのワブテックは1.5兆円。日立はこの4社に続く5番手だ。
日立が売上高2兆円を達成したとき、他社の売り上げが変わらなければ業界3位ということになるが、おそらく現在の日立は業界順位を以前ほど気にしていないはずだ。
というのも、ライバルと戦うためには規模が必要としていた2016年当時と違い、現在の日立は独自の武器を持っているからだ。それは、日立が開発したIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」である。その技術を活用して鉄道運行の信頼性の向上、エネルギー効率の向上、保守コストの削減、オペレーションコストの最適化などを図る。

AI活用で先行する鉄道事業
日立がルマーダを発表したのは2016年5月。「1兆円宣言」をした2016年9月からほんの数カ月前のことだ。それから年月が過ぎ、2025年3月期の鉄道事業の売り上げに占めるルマーダ関連の比率は29.6%まで達した。金額に換算すればおよそ3500億円をルマーダがもたらしたことになる。当然ながらこの比率はさらに伸ばせると日立は考えている。
鉄道事業におけるルマーダ拡大の尖兵が、昨年9月に発表した「HMAX(エイチマックス)」というデジタルプラットフォームである。一言で言い表せば、鉄道事業でこれまで実施しているデジタル技術を活用したさまざまな保守サービスをエイチマックスというブランドでまとめ直した。
独自のセンサー技術やAI技術を駆使したサービスが強みで、すでに欧州で走る2000編成、8000両の日立製車両に導入済みだ。そのサービス内容からエイチマックスの受注は複数年契約になる傾向があり、契約が増えれば増えるほど売り上げは累積されていく。
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