暗号資産のホルダーが儲けても売らずに「ガチホ」な理由。所得税・相続税で最高110%の課税は避けたい

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確定申告の書類とビットコイン
ビットコインで”億り人”になっても、所得・住民税で最高税率55%、相続税で同55%の税金がかかる仕組み。これでは売却益を実現できない(写真:makaron* / PIXTA)
金(ゴールド)と暗号資産(デジタルゴールド)が今、注目されている。金は今年2025年4月にニューヨーク金先物価格が1トロイオンス3500ドル台、暗号資産の代表格であるビットコインは5月に1BTC11万ドル台の史上最高値を更新した。
コロナ禍の財政支出拡大で世界的なインフレが進み、ウクライナや中東情勢など地政学リスクも高まっている。現金の価値が目減りする中、金や暗号資産は資産ポートフォリオを防衛するため、株や債券に次ぐ、第3の選択肢として有力なのだ。
週刊東洋経済7月5日号(6月30日・月曜発売)の特集は『今こそ知りたい「金」「暗号資産」』。金や暗号資産の価格が高騰する背景から、株式市場で注目されるビットコイン関連株、金の歴史、さらには業界キーマンへの単独インタビューまで、幅広くかつ網羅的に取り上げた。
週刊東洋経済 2025年7/5号(今こそ知りたい「金」「暗号資産」)[雑誌]
週刊東洋経済 2025年7月5日号の特集は『今こそ知りたい「金」「暗号資産」』。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。定期購読の申し込みはこちら

俗に”ガチホ”と言われ、暗号資産で儲けても売らずにガッチリとホールド(保有)している人は、間違いなく税金が理由である。

暗号資産で注目される1つが税制だ。2024年12月16日、1ビットコイン(BTC)は1600万円を突破。同19日には自民党政務調査会が「暗号資産を国民経済に資する資産とするための緊急提言」を公表した。

現行の税制では暗号資産の取引で生じた個人所得は雑所得に該当するものとされる。提言では、暗号資産は総合課税の対象として、所得税と住民税を合わせた最高税率55%が課されるなど、諸外国に比べて厳しいと指摘した。

具体的には、暗号資産を国民の投資対象となるべき金融資産として扱うかを踏まえ、①暗号資産の取引で生じた損益について20%の税率による申告分離課税の対象とすること、②同じく所得金額からの損失の繰り越し控除を認めること(翌年以降3年間)、③暗号資産のデリバティブ取引も申告分離課税の対象にすることなどについて、検討すべきとぶち上げたのだ。

暗号資産なら所得税は最高55%だが、株なら約20%

一方、投資商品の代表といえる株にかかる税は、所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%で、計20.315%。新NISA(少額投資非課税制度)を活用すれば非課税になる。一方、暗号資産にかかる税は、儲かれば儲かるほど税率が上がる累進課税で、最高税率は55%になる。

それだけではない。6億円超の暗号資産を相続した場合、相続税の最高税率が55%課される。相続税は現金のみでしか支払えないから、相続した暗号資産を売却するのが必至。一定金額を取得費用に加算できる「相続税の取得費加算の特例」の対象にもならない。つまり、相続した暗号資産をすべて売却すると、所得・住民税55%と相続税55%の計110%が課税され、暗号資産の価値を超えた納税を強いられることになる。

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