議決権行使へ一計、「個人株主いらっしゃい」-ポイント付与や土産

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建設業界で働く東京都内在住の篠崎貴広さんは国内企業の株式を50銘柄保有し、ほとんどで議決権を行使している。長期保有が基本のため、会社案に不満がある場合には反対するとした上で、これまで9割以上の会社提案に賛成票を投じてきたと話す。

篠崎さんは22年から半日休暇を取得するなどし、株主総会に参加している。議決権行使後の抽選でポイントが当たったことはないが、「今後個人株主の比率が大きくなり、少なからず影響が出てくる」と予測。投資家にポイントを付与することで、議決権行使への関心を促すことも良いのではないかと述べた。

議決権行使サイトを運営する信託銀行各社もインターネット経由の行使を促進するため、ポイントの付与などを行っている。三菱UFJ信託では、企業や自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するギフトパッド(大阪市)と組み、ネットでの議決権行使株主に電子ギフトを贈るサービスを提供。丸谷氏によれば、同サービスの契約数は数年間にわたり増え続けている。

三井住友信託銀行も、議決権行使などを行った利用者にアプリ上で物品と交換可能なポイントの付与を10月以降に開始する予定だ。大和総研コーポレート・アドバイザリー部の吉川英徳主任コンサルタントは、個人の投資額は機関投資家より小さく、採決の結果に与える影響は未知数だが、僅差勝負になれば「個人株主はキャスチングボートを握る可能性がある」と言う。

「ファン」獲得

企業が個人株主を厚遇する姿勢は、株主平等原則の観点や新型コロナウイルス禍のオンライン開催で減っていた「総会土産」の復活からも顕著だ。三井住友信託が行ったアンケートの回答企業のうち、6月総会で土産を用意していた企業の比率は24年に11%と23年の10%、22年の5%から増えている。

米国出身で日本在住約30年のダン・カステラーノさんは事業内容を理解し、ファンになった企業に投資する株主だ。英国風パブ運営のハブは投資先約15銘柄の一つで、総会でのTシャツや限定グッズの配布に期待感を示す。「愛着のある企業と深く関わりたいと思っており、その方法の一つとして株主になりたい」と話す。

三井住友信託の須磨美月法務・ガバナンスチーム長は、総会土産を配る企業の増加は安定株主が減少する中、株式を長期間保有してくれるファンを増やしたいとの企業の思いが背景にあると分析する。

一方、一部の個人株主にとっては総会に足を運ぶ動機が土産をもらうことになり、活発な質疑応答が行われないリスクがあるため、「ガバナンスの観点からすると、それほど望ましくない状況になる」恐れに懸念を示した。

ニッセイ基礎研究所の森下千鶴研究員も、個人株主は企業を応援しつつ、ガバナンス体制を見ていく「責任もある程度求められる」と指摘し、「企業側の思惑的な動きは注視していかなければいけない」と語った。

著者:横山桃花

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