先生を悩ませる「保護者」、なぜトラブル絶えない?"対等な関係"構築に必要な視点 さまざまな場面で使える声かけ7つのフレーズ
――「仲間」として「共に歩む」ということでしょうか。
本当は、保護者とは「精神的に裸で付き合いたい」という思いがあります。「精神的に裸で付き合う」とは、お互いに不満や希望があれば包み隠さず伝え合い、できない場合はその事情をていねいにきちんと伝え合うということです。しかし、これには信頼関係が不可欠であり、現状ではその信頼関係がないから「保護者対応」が存在するのです。
だから私は、先生たちに、先生という立場からまず一歩踏み出して、1人の人間として、「保護者対応」のその先にある、信頼し合う関係性を一緒に築いていきませんか?というメッセージを送りたいのです。
――林先生がおっしゃる信頼関係は、どのように築けばよいのでしょうか。
先生が、保護者と真に強い信頼関係を築くには、時に「傷つく覚悟」も必要になると考えています。保護者から苦情を言われたり、厳しい指摘を受けたりしたとき、「保護者対応」を使わず本音で想いを伝えたら、より強い言葉を浴びせられ続けるかもしれませんから。
それでも、「この方は、お子さんを心から大切に思っているからこそ、今、このような感情になっているのだな」「もしかしたら、私の対応で不十分な点があったのかもしれない」と、相手の背景を想像し、自身のあり方を見つめ直します。「心の奥底に芽生えた少しネガティブな感情」を必死で抑え、保護者への愛や理解の気持ちを失わないように踏ん張るのです。
――日々忙しい先生にとって、ハードルが高いのでは。
正直、これが完璧にできる先生はほとんどいないと思います。かくいう私自身も、保護者を分け隔てなく愛せる人格者ではありません。この取材で立派なことを答えていますが、日々の保護者との関係では、「保護者対応」を超えようと気負っては、うまくいかずに失敗ばかりしています。
そもそも、先生だって人間ですから、理不尽なことを言われたら、やっぱり腹が立ちますよね。でも、そんなことは言っていられません。子どもと保護者は地続きですから、子どもを幸せにしようと思ったら、保護者を愛するしか方法はないんです。
しんどいとき、頼りになるのが身近の仲間です。管理職の先生や先輩の先生など「自分を支え、応援してくれる」というのは大きな力になります。多くの先生方は保護者との関係で悩んだ経験がありますし、「いつか自分も同じ状況になるかもしれない」と思っていることが多いため助けてくれるし、心配してくれるんです。私もたくさん、周囲の方に助けられてきました。先生方だけではなく、保護者の方も含めて。
また、学校は、基本的に「報・連・相」がとても大切な場所です。一人で抱え込まず、「報・連・相」をしっかり行って助けを求めることが大切です。もちろん、残念ながらそうした助け合いが難しい環境もあるかもしれません。もしそうなら、それはとてもつらいことですよね。そんなときは、職場の外でもいいと思うので、とにかく誰か、話をする相手を探すべきです。
学校や先生を信じてほしい
――先生と「対等」で「隣り合う」関係になるために、保護者は何が必要でしょうか。
保護者の方には、「学校や先生を信じてほしい」と心から願っています。シンプルに、その一言に尽きます。また、先生たちの働く環境についても知っていただきたいです。今、多くの先生たちは、残業代が出ない無賃労働を毎日3時間ほどやらざるをえないのが実情です。それは、子どもたちのためにきちんと教育環境を用意したい、保護者の要望にもなるべく応えたいと考えるからです。
例えば、定時を過ぎた午後7時からの個人面談でも、「大丈夫です」と快く引き受ける先生がほとんどです。多くの先生たちが「人のよい」部分を持っているからです。しかし、勤務時間外の対応には、先生たちの時間的・体力的な負担が伴います。
けれど、誰かがそのことを伝えてしまうと、「あの先生は対応してくれたのに、この先生は勤務時間を気にするのか」といった声につながるのではないかと、先生たちは懸念しています。そのため、本来伝えたいことも胸にしまい、「わかりました、7時ですね」と引き受けているのが実情です。個人面談はあくまで一例ですが、さまざまな場面でこのようなことが起きています。
――保護者が先生に何かを伝えたいとき、意識するポイントはありますか?
何か疑問や心配なこと、伝えたいことがあれば、感情的にならず、まずは「これはどうなっているのですか?」と、素直に尋ねていただければと思います。そうすれば、私たちはすべての状況をていねいに説明し、疑問にお答えすることができます。最初から強い不満や怒りの感情で伝えられてしまうと、その感情を受け止めることに終始してしまい、本来伝えたいことや、解決に向けた建設的な話し合いが難しくなってしまいます。
――林先生は、保護者にどのような言葉を伝えていらっしゃるのですか?


















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