先生を悩ませる「保護者」、なぜトラブル絶えない?"対等な関係"構築に必要な視点 さまざまな場面で使える声かけ7つのフレーズ

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そのときの状況や相手により異なりますが、以下の言葉は、私の口から自然とよく出るフレーズです。

◉「大丈夫ですよ」

保護者は、「うちの子大丈夫かなぁ」と、絶えず気にしています。だからこそ、最初に安心を伝えます。これから先、長い人生を送る間でもっと大変なことに出会うかもしれません。それに比べれば、今の悩みなんて「大丈夫ですよ」という気持ちもあります。

◉「一緒にやりましょう」

持ち物がそろわない、宿題を出さないなど子どもに目を向ける余裕がない保護者に伝えます。子どもの学習準備の習慣が定着するまで、用意できない物を貸したり、「夜遅くまで開いている○○スーパーに売っていますよ」と情報を伝えたりなど、こまめに保護者を励まします。

◉「聞いてみますね」

保護者からの要望や提案、質問に対し、管理職の判断が必要でその場で回答できないときにこう答えます。聞いた結果は必ずフィードバックし、期待に添えない場合は、どう聞いたのか、なぜダメなのかを電話でいいので詳しくていねいに説明します。

◉「心配は(なるべく)しないでくださいね」

保護者、とくに母親が心配するとそれが子どもに「自分は心配な存在なんだ」という認識となって伝わり、自信が持てなくなります。自信が持てなくなると、チャレンジを怖がり、失敗を避けるようになります。子ども時代は「失敗してナンボ」ですから、この言葉は毎年一生懸命保護者に伝えています。

◉「今、友達がいてもいなくても、まったく気にすることはありません」

保護者の心配事でいちばん多いのが、「友達とうまくやれているか」。どの子も必ず、いつかきっと、長い人生のどこかで友達とのすてきな出会いに巡り合います。大人が過剰に心配しなければ、子どもたちは自分のやり方で人生を切り開いていけるように思います。

◉「学校では、毎日いろいろありますよ」

たくさんの子どもたちが日々を共に過ごす学校という環境では、いろいろなことが起きるのが当たり前。それをあらかじめわかっておいてほしくて、保護者にいつも伝えています。

◉「大事なのは幸せです」

子どもの才能を最大限に伸ばしたいという保護者の思いと、学習成績やスポーツ・芸術活動の成果をあげることに夢中になりすぎて子どもを追い詰めてしまう、いわゆる「教育虐待」は地続きです。素朴な願いが変質することのないよう、保護者と共有しておきたい言葉です。

これらはあくまでも、私の心から生まれた言葉です。実際には先生方それぞれが、自分らしい言葉でコミュニケーションを図ってほしいと思います。

簡単な道のりではないけれど…

――不登校の子の保護者とはどのように関わっていらっしゃいますか?

不登校で一番つらい思いをしているのは、実は保護者の方々だと私は考えています。保護者のつらい気持ちを、どうにかして和らげたい。その方法を一緒に見つけたいと願っています。

そのために、不登校のお子さんを持つ保護者の方とは、面談の機会を設けたり、日頃から連絡を取り合ったりして、励まし合うことを大切にしています。

――林先生が考える、これからの学校と保護者の関係性について聞かせてください。

私が目指すのは、学校と保護者が「対立」するのではなく、「連携」し「対等な人間同士」として子どもたちの成長を支える関係です。

これまでお話ししてきたように、多くの先生たちは、子どもたちのために日々奮闘しています。時には心ない言葉に傷つきながらも、時間外労働もいとわず、目の前の子どもたちと保護者のために尽くそうと努力しています。

繰り返しになりますが、先生も人間です。完璧ではありませんし、理不尽なことに感情が揺さぶられることもあります。そんなとき、先生を支えるのは、職場の仲間であり、そして何よりも、「信じてくれる」保護者の存在です。

かつて地域社会が担っていた「インフォーマルな支援システム」が薄れる中で、学校が「最後の砦」となり、さまざまな課題を抱え込むようになりました。だからこそ今、私たち学校と保護者が、お互いの立場を理解し、尊重し、心を裸にして語り合える関係を築くことが不可欠だと思います。

それは決して簡単な道のりではありません。先生には「傷つく覚悟」が必要であり、保護者には「信じる気持ち」と「歩み寄る姿勢」が求められます。しかし、その先にこそ、子どもたちが安心して学び、健やかに成長できる、素敵な未来があると信じています。

(注記のない写真:metamorworks / PIXTA)

長島 ともこ フリーライター&エディター

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ながしま ともこ / Tomoko Nagashima

育児、教育、PTA、暮らしのジャンルを中心に、書籍、雑誌、PR紙、WEB媒体において取材、執筆、企画、編集、講演等の活動を行っている。また、自身のPTA活動や記事執筆を機に、全国のPTA仲間と「PTA・保護者組織を考える会」を立ち上げ、情報発信やイベントの運営、PTAやP連からの相談活動等を行う。

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