保護者"同伴"の立川・小学校侵入事件から学ぶ 「保護者対応の限界」と危機管理 理不尽な要求は断固拒否、外部専門家の援助を
そのためにまず求められるのは、教育委員会等を巻き込んだシステムづくりだ。学校・教員は、保護者の意見にまず耳を傾ける。傾聴の姿勢は忘れてはならない。しかし、理不尽な要求に対しては、いたずらに話し合いを繰り返すのではなく、断固として拒否する。そして、スクールロイヤーなど、教育委員会が配置する外部の専門家の援助を求め、場合によっては引き継いでいくという手法である。
教員は、子どもの教育の専門家ではあるが、必ずしも保護者対応のプロではない。対応が困難な保護者と向き合うに当たって、スクールロイヤーをはじめとする外部の専門家の協力を得ることは文部科学省も提唱しているところだ(文部科学省「教育行政に係る法務相談体制構築に向けた手引き(第2版)」令和4年3月等参照)。
事件の再発防止に向けて、これら外部の専門家と学校、教員との早い段階での協働、分担、この体制を早急に確立することが重要と言えるだろう。
児童・生徒が自ら身を守るためのロールプレイング訓練が必要
今回の事件は、教員の奮闘により児童に被害は及ばなかった。学校において児童・生徒を加害行為から守るのは学校設置者の義務である(学校保健安全法26条)。立川市はこの義務を見事に果たしたことになる。
しかし、大阪教育大学附属池田小学校の例を持ち出すまでもなく、外部侵入者から常に教員が児童を守り切れるとは限らない。それ故、すべての児童・生徒が、自ら適切に判断し、主体的に行動できるよう、安全に関する資質・能力を身に付けることが重要と言える。いわゆるセルフヘルプの視点である。
この点、国の第3次学校安全の推進に関する計画(令和4年3月25日付け閣議決定)は、「児童生徒等がいかなる状況下でも自らの命を守り抜き、安全で安心な生活や社会を実現するために主体的に行動する態度を育成すること」の重要性を指摘している。児童・生徒が危険を予測し、回避する能力を育成することである。外部侵入者への対策としては、暴行、傷害などの犯罪から身を守るため、ロールプレイングを導入すること等を早急に検討する必要がある。
(注記のない写真:キャプテンフック/PIXTA)
執筆:淑徳大学総合福祉学部教授 坂田仰
東洋経済education × ICT編集部
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