東宝が「新海誠作品を手がけるアニメ会社」に出資した知られざる内幕 コミックス・ウェーブ・フィルムの川口典孝氏が語る東宝の凄み

新海誠氏との出会いを機に、2007年に独立した川口氏。長い付き合いのある東宝は、親戚のような存在だという(撮影:今井康一)
東宝は2024年10月、『君の名は。』や『すずめの戸締まり』など、新海誠監督の大ヒット作品を世に送り出してきたアニメ会社、コミックス・ウェーブ・フィルムに対し、6%を出資したと発表した。
リリースには、創業オーナーである川口典孝会長からの「申し出」と記されているが、これ以上の背景は詳らかになってこなかった。今回、川口会長がこの件について初めてメディアの取材に応じた。
なぜ東宝からの出資を望んだのか。今後、東宝に何を期待するのか。独占インタビューをお届けする。
事業承継への危機感があった
――東宝に出資を申し入れた経緯を教えてください。
『すずめの戸締まり』が終わり、ちょうど去年で55歳。そろそろ社長を譲らないと、事業承継に失敗してしまうという危機感があった。10年以上前から候補者を探してきて、5年前に優秀な人材(現社長の徳永智広氏)が入社し、育ってくれたので、去年社長を譲った。
そのうえで、“チーム新海”を外部からいろんな人に支えてもらう必要性を感じていた。もともとアニメイトからも5%ほど出資を受け、応援してもらってきたので、こういう企業があといくつかいてくれるといいな、と。いちばんバランスがよいのは、東宝によるマイナー出資だった。
僕は、東宝の島谷能成(前社長、現会長)さん、松岡宏泰社長のそれぞれと知り合いだった。2024年の6月ごろ、東宝の日比谷本社に直接行って、松岡社長に(持ち株売却の)意向を伝えたところ、二つ返事で「ぜひ」と言ってくれた。
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