ビッグ・テックが勝てないゲームに持ち込み、どう戦うか? プラットフォーム戦略の世界的権威が説く従来型企業がとるべき「競争戦略」とは

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特に注目すべきは、ドミノ・ピザの事例です。かつてピザハットとの競争で苦戦していたドミノ・ピザは、J・パトリック・ドイルCEOのもとで劇的な変革を遂げました。

ドミノ・ピザの本来の強みは、「ピザのオーダーフルフィルメント(注文受付処理)」の専門性にありました。1984年に初めてコンピューター化されたオーダーシステムを導入して以来、30分以内の配達保証など、効率的な配達システムと広範な店舗ネットワークを強みとしてきました。

競合他社にはない独自の価値を持つ

ドミノ・ピザは、デジタル技術の登場により、既存のオーダーフルフィルメントという強みを拡張して、競合他社が追随できない独自の価値を生み出しました。2008年に導入した「ピザ・トラッカー」は、ドミノ・ピザ独自のデータである「注文を受け付けてからピザを作り、配達するまでの進捗状況」を用いることで、顧客が注文から配達までの全体をリアルタイムで確認できるシステムです。

この導入により、マーケティングの効果を得るだけでなく、顧客が抱えていた注文待ちの不安を大幅に軽減し、顧客満足度と信頼感を向上させることに成功しました。

さらに、「ゼロ・クリック」という自身のお気に入りやカスタマイズを保存して簡単に再注文できるアプリの開発、Facebook Messenger、Amazon Alexa、Google Homeなどのあらゆるチャネルから注文可能なシステムの立ち上げ、そしてドローン配達試験の推進など、一連のデジタル革新は、すべて既存のオーダーフルフィルメントの強みを増幅するために設計されました。

この戦略的なテクノロジー活用により、ドミノ・ピザは2010年から2023年の間に株価上昇率4600%超を達成し、上昇率はアマゾンやアップル、アルファベットをも上回る企業となりました。重要なのは、これらの成功がオーダーフルフィルメントという既存の強みをデジタルで強化し、顧客体験を向上させたことに起因しているということです。

このようにドミノ・ピザは、自社が獲得できるデータから得られた洞察を顧客価値に変換して顧客の真のニーズを満たし、スマート・ライバルとなることに成功しました。

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