どこの会社も"パーパス"ばかり… 多くの日本企業が陥っている「パナソニック病」の正体

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パナソニックが陥っている“病理”は同社特有のものではない。多くの日本企業が陥っている難題とは?(撮影:尾形文繁)
家電大手のパナソニック ホールディングス(HD)が5月9日に発表した「グループ経営改革の進捗」。2026年度の収益改善効果目標とともに、その達成に向けたロードマップが説明された。だが、これを受けた報道各社のタイトルはほとんどが「パナソニックHD、従業員1万人削減」。経営改革の中身よりも人員削減のインパクトに比重が置かれた。
同社に何が起きているのか。松下電器産業時代からパナソニックを取材・研究してきた“松下ウォッチャー”が、前編・中編・後編の3つに分けて同社の陥った「病理」を分析する。
前編:"松下ウォッチャー"だけが知る、「社員1万人削減」を発表したパナソニック楠見CEOが終始無表情だった胸の内
中編:"松下ウォッチャー"が看破する、パナソニックが「人員削減を繰り返す会社」へとなり果てた根本理由

(外部配信先ではハイパーリンクや画像がうまく表示されない場合があります。その際は東洋経済オンラインでご覧ください)

パーパス作って魂入れず

今や、いつものとおりの横並び現象で、日本企業はどこもパーパスに酔っている。経営者たちは「社員たちも気に入っている」と口をそろえて言う。

「社内アンケート調査」では、アメリカの大統領選挙に関する世論調査のごとく、本音を言わず、多くの社員は「良い」と回答しているのだろう。本当は、社歌斉唱や社是唱和のように、「給料の一環だからしようがないな」くらいにしか思っていないのではないか。

今回の1万人削減においても、楠見氏は「私は社員の理解を得るよう、丁寧に説明を続ける」としているが、「丁寧な説明」の表現と内容、そして説明方法はどのようなものなのか。それをリストラ対象となる社員とその家族は、どのように受け止めるだろうか。興味津々である。

このような論点は、データサイエンス重視、AI(人工知能)活用の時代において、些末で非合理なこととして避けられがちだ。だが、野中郁次郎・一橋大学名誉教授が提唱した「知識創造理論」から発想すれば、表現力の劣化は企業競争力の劣化につながる。

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