どこの会社も"パーパス"ばかり… 多くの日本企業が陥っている「パナソニック病」の正体

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すでにパナソニックグループでは、業務にAIを積極的に活用している。今後は経営者の重要な仕事もサポートしてくれるだろう。そう期待したいところだが、AIはデータ分析や業務効率化に貢献するものの、「最も安全な選択肢」を選びがちである。そのため、リスクを冒してでも新しいことに挑戦する決断ができない。

AIは感情を模倣できるが、心から感情を込めて話すことや、その場にある空気や微妙なニュアンスを直感的に感じ取ることは不得手。アドリブでユーモアや皮肉を盛り込み「座布団一枚」というわけにはいかない。

ならば経営者(リーダー)は、AIを活用しながら、より良い人間的表現を実践するにはどのようにすればいいのだろうか。シンプルに説明すれば次のようなプロセスになる。

① AIがデータを提供
 → 定量的データに基づき説得力が増す
② 経営者(リーダー)が人間らしい言葉で形にする
 → AIが分析した聞き手の興味や理解力に合わせて話の内容を最適化する
③ AIが発言の反応を分析する
 → 自然言語処理(NLP)と感情分析技術を活用し聞く側の反応を分析し、次回のスピーチを改良する
④ 経営者(リーダー)が倫理的視点で調整する
 → AIが導き出した答えに対して疑問を持ち、社会的責任を考えて言葉を選ぶ
⑤ AIが最適な戦略を示す
 → ①~④の結果(データ)をAIが統合、整理し、最適な表現を提案する
⑥ リーダーが共感力をもって伝える
 → AIが示す数値や市場分析を単なる事実として述べるだけでなく、ビジョンを示し、感情を込めた言葉で物語を語り(ストーリーテリング)、聞く側に感情移入する

今こそ求められる「共感の表現力」

AIは文章やプレゼンを生成できるが、ステークホルダー(従業員、顧客、投資家=株主、サプライヤー、地域社会など)の心を動かすスピーチや交渉には「人間ならではの響き」が欠かせない。論理的な説明だけでとどまるのでは不十分で、共感を生む表現力が求められる。

表現力は企業価値を高めるだけでなく、企業文化を構築、変革する牽引力になるだろう。AIアナウンサーのような表現をしていては、トップ自らがカジュアルウェアに変えてみたところで自己満足で終わっている。「なかなか魅力的な会社だ」「なかなかおもしろい社長だ」と言われる「共感の表現力」がAI時代だからこそ求められる。

長田 貴仁 経営学者、経営評論家

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おさだ たかひと / Takahito Osada

経営学者(神戸大学博士)、ジャーナリスト、経営評論家、岡山商科大学大学客員教授。同志社大学卒業後、プレジデント社入社。早稲田大学大学院を経て神戸大学で博士(経営学)を取得。ニューヨーク駐在記者、ビジネス誌『プレジデント』副編集長・主任編集委員、神戸大学大学院経営学研究科准教授、岡山商科大学教授(経営学部長)、流通科学大学特任教授、事業構想大学院大学客員教授などを経て現職。日本大学大学院、明治学院大学大学院、多摩大学大学院などのMBAでも社会人を教えた。神戸大学MBA「加護野忠男論文賞」審査委員。

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