実は、仮設モデルルームを最初につくったきっかけは、当時、大森で料亭を経営していた地権者からのアドバイスだった。「361戸もの大型物件なので、お客さまにアピールするためにも、モデルルームをつくったほうがよいのでは」と言われ、それを受け入れてつくったのだった。
大京の社史によれば、このときの仮設モデルルームは現在のような豪華なものではなく簡素なもの。専用の接客スペースもなく、営業担当者はベッドの上やキッチンの流し台の横にパンフレットを広げながら説明していた。それでも、短期間で完売となる成功を収めた。
大京は資産家向けの投資用マンションの販売では早くから青田売りを実践していた。パンフレットも作らず、建築確認申請が通ると、その1〜2週間後にはすべて売り切ってしまうというような猛烈営業を重ねていた。
だが70〜80年代、住宅金融公庫の低金利ローンを活用した「公庫付きマンション」が普及。サラリーマンでもマンションを買えるようになった。そうした実需者向けには、完成後のイメージが伝わるモデルルームの重要性が増した。「ライオンズマンション大森」を短期間で完売できたことはそれを裏付けるものとなり、これ以降、大京の販売戦略は大きく変わっていった。
「いかに効率よく早く売るか」
大京の販売手法の核心は「いかに効率よく、早く売るか」だ。顧客層が資産家からサラリーマンへと広がる中、仮設モデルルームによる先行販売は、大京の営業を支える強い仕組みとなった。
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