「子どもを義務から解放」お寺のフリースクールに見る"学びの多様化"最前線 不登校34万人超えの今考えたい「居場所づくり」
お寺ならではの強みとフリースクールの「費用」課題
地域コミュニティの拠点とも言えるお寺には、檀家さんをはじめ、お参りに来た人など、さまざまな人が出入りする。そのため、子どもたちはさまざまな大人と接することになる。
「核家族が増え、子ども会などの活動も減り、子どもたちは個で生きられるようになりました。でもそれは孤独の“孤”でもあるといえます。お寺でいろいろな大人と接することは、自分も社会の中にいるという実感につながります。お昼ご飯を作る時は近所のスーパーに買い出しに行くのですが、地域の方も温かく見守ってくれています」(児玉氏)
お寺であることに加え、幼稚園が併設されていることも大きいという。不登校の児童生徒の中には昼夜逆転など、生活習慣が乱れるケースもあるが、ここなら園庭で思い切り身体を動かせるので、生活リズムを整えやすい。
一方、課題もある。一般的にフリースクールに通うには費用がかかる。てらこやさんはお寺の本堂を使っているため、他のフリースクールのような家賃などの固定費はかからないが、人件費を確保する必要がある。
そのため、一般的なフリースクール同様、利用者が利用料金を払うことになるが、その費用を捻出できずに通うのを諦めざるを得ないケースもあると見られるという。
不登校の児童生徒が増える中、東京都では2024年からフリースクールに通う小・中学生に一人あたり月額最大2万円の補助を行っている。名古屋市では広沢一郎市長が2025年3月の市議会で東京都を超える制度を目指す旨を発言。児玉氏もこれに期待を寄せている。
「学区や学年を超えた居場所を子どもたちが見つけられるといいですよね。そのために、コミュニティセンターのような役割のお寺が増えたらいいなと思います。私たちも『てらこやさんと出会えてよかった』と子どもたちに思ってもらえるような活動をしていきたいですね。不登校は、あくまでも成長段階の1つの出来事。子どもさんも親御さんも、誰も悪くありませんし、失敗と捉えてほしくありません。これからは、こうした思いも伝えていけたらと思っています」(児玉氏)

昔から地域コミュニティの中心としての役割を果たしてきたお寺。そこに開設されたフリースクールは、人や社会と接する機会が減りがちな子どもにとって、学習を超えた学びや出会いの場として機能しているようだ。
子どもを取り巻く状況が大きく変化する中、昔ながらのお寺を起点とした地域と教育のあり方を再編成することは、新たな選択肢と可能性を生むことだろう。
(文:吉田 渓、編集部 晏 暁丹、注記のない写真:てらこや提供)
東洋経済education × ICT編集部
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