「アメリカ・ウクライナ経済協定」にはロシアを引き入れよ!それが欧州を安定させ、世界の「レアメタル争奪戦」を緩和させることになる

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ここで、レアメタルとレアアースの関係をごく簡単に整理すると、レアメタルは読んで字のごとく、手に入りづらい希少な金属のことを指す。47元素の金属がこれにあたり、代表的なものには携帯電話などのバッテリーに欠かせないリチウムなどがある。一方、レアアースは、この47元素のうちの17元素の総称だ。EV、ハードディスク、エアコンなどのモーターなどに搭載される磁石の原材料となる、ジスプロシウムなどが代表的である。レアアースは少しの量で素材の性能を高めることができることから「産業のビタミン」とも呼ばれている。

ではウクライナには、どれだけのレアメタルやレアアースの資源があるのだろうか。すでにアメリカの地質調査所(USGS)のデータなどでも明らかだが、ウクライナにあるとされる資源は、ウラン(2023年で推定1110億トン、総額約2200兆円前後)やチタン、リチウム、ガリウム、マンガン、ジルコニウムなどのレアメタルが主体だ。一方、レアアースはと言えば、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジムなどは確認されてはいるものの、埋蔵量は限定的とされる。

これは筆者の経験に照らしてみても、間違っていないと思われる。また、こうしたウクライナの資源の半分程度が、現在も戦闘が続くルガンスク、ドネツク、ドニエプロペトロフスクの東部3州に集中しているとされることも、ロシアが停戦に応じないきわめて有力な理由の1つになっている。

アメリカ、ウクライナ、ロシア、EUによる国際協調必要

だが、専門家の目からみてウクライナの資源がどこまで現実的なのかが不明だとしても、鉱物資源の共同開発は、意味のあるものになるはずだ。ウクライナにとっては、経済成長を促進し、雇用の創出につながるだけでなく、アメリカと経済的なつながりを持ち、他の勢力が勝手なことができなくなるという意味で、事実上の安全保障が成り立つからだ。今回の発想法は、筆者に言わせれば、国内にアメリカの基地駐屯を認めている、日本などの国の立場と似たような構図だ。

また、多少時代遅れではあるものの、ウクライナには古くからチタンやガリウムなど、レアメタルの商業鉱山や精錬所が存在するのも事実である。アメリカの資源企業が鉱物資源産業のサプライチェーン(鉱山の探査.採掘、分離選鉱、電解加工、流通、販売)に至るまでの流れを事実上支配すれば、アメリカとウクライナは「ウィンウィン」になる。

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