ついに「減税」へ舵を切った立憲民主党、その水面下で繰り広げられた抗争の"全内幕"
これまで立憲内部には消費税に関して、①時限的な食料品の消費税率をゼロ%、②消費税率の一律5%引き下げ、③中低所得者の消費税の一部を税額控除し、控除しきれない分を給付する「給付付き税額控除」という3案が検討されてきた。これも踏まえて、「食料品の消費税をゼロ%にした後、給付付き税額控除に移行する」との案を盛り込むことでまとまった。
今回の決定に先立ち、野田代表は24日の党内論議で「消費税負担の軽減策に関しては、熱心な議論をしていただいた。真摯に受け止めて判断をしたい」と、党内多数派の意見を尊重する考えを示唆していた。
対立激化の発端は枝野氏の「分党発言」
今回の激しい党内対立は、減税反対派の旗頭とされる枝野幸男元代表のいわゆる「分党発言」が発端となった。枝野氏は12日に地元・さいたま市内で行った講演で、「減税ポピュリズムに走りたいなら、別の党をつくるべきだ」と発言。これに党内の減税派が猛反発し、「このままでは党分裂もあり得る」(若手議員)という異常事態につながっていた。
そうした中、野田代表は15日、記者団に対し「私は今の党内議論をポピュリズムとは思わない。物価高の問題を踏まえ、真剣な議論をしてもらっている」などと強調。「党分裂は絶対避けなければならないとの立場」(側近)から、事態収拾に腐心してきた。
というのも、同党の源流となる旧民主党も、今回と同様、消費税をめぐる党内抗争の果てに党分裂を余儀なくされ、政権を失った経緯がある。現在の立憲民主党の創設者である枝野氏としては、衆議院選挙で「減税」を掲げて議席を減らしたことへの反省を踏まえた“分党発言”だったが、「党内の反発は枝野氏の想定を超えた」(周辺)のが実情とみられる。
もちろん、民主党政権での首相時代に、当時野党だった自民・公明両党との党首会談で、現在の消費税率10%に道筋をつけたのは野田代表だ。ただ、民主党政権誕生の立役者だった小沢一郎氏との激しい対立が党分裂という最悪の事態につながっただけに、立憲民主党内でも「消費税をめぐって『分党』に言及するのはタブー」(有力ベテラン議員)との共通認識があったことは間違いない。
だからこそ、野田氏は「活発な意見交換をして、一定の時期が来たら集約する。結論が出たら従う政治文化をつくるのが私の役割だ」と繰り返してきた。野田氏を支える小川淳也幹事長も記者会見で「枝野氏は党の創業者だ」としつつ、「異なる意見に耳を傾けられるかが、党の懐の深さを体現することにつながる」などと党分裂の回避に腐心してきた。
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