思春期に知りたい「体の自己決定権」とは?「性の話題」タブー視は危険を招く SRHRを伝えないと妊娠・出産の圧になることも

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「SRHR(性と生殖に関する健康と権利)」、一見取っつきにくいこの言葉。意味するのは、一人ひとりの根源的な権利、体の自己決定権だ。男女ともに、誰もが持つ大切な基本的人権の1つでありながら、まだまだ日本では浸透していない。 SRHRは、心身が大きく変化する思春期のただなかにある中高生にこそ知ってほしい、と語るのは産婦人科医の稲葉可奈子氏だ。社会の性教育に対する誤解やタブー視から、中高生たちは適切な知識を得づらい状況にあるという。SRHRへの理解がなぜ中高生にとって重要なのか、教員は生徒にどう伝えればいいのか、そして保護者はどう子どもと向き合うといいのか、わかりやすく解説する。

軸となるのは「体の自己決定権」

SRHRとは、“Sexual and Reproductive Health and Rights(セクシュアル & リプロダクティブ ヘルス & ライツ)”の略で、「性と生殖に関する健康と権利」を指します。なんだか難しく聞こえて、「性的なことに興味ない」「子どもを持つつもりない」と、早くも「この話は自分には関係ない」と思われた方もいるかもしれません。

しかし実は、SRHRは私たちの日々の生活やニュースとも密接にかかわっています。単に妊娠・出産にまつわる医療的な話や、女性にだけ関係のある話ではありません。

「SRHR」というのは、すべての人が自分の体や性について自由に考え、選択し、尊重され、体の自己決定権を持つこと。また少々小難しい説明になってしまったので、なぜ誰にとっても重要なのかを具体的にお話ししていきたいと思います。

まだまだ知名度の低い「SRHR」ですが、本当に大事な概念なので、私は「SDGs」くらい浸透させていきたいと本気で思っております。

SRHRはすべての人が持つ「権利」

SRHRは、誰もが生まれながらに持つ基本的人権の1つです。

その原点は1970年代の「女性の権利運動(Women's Rights Movement)」にあります。この時期、世界中で女性たちが声を上げ、自らの身体に関する決定権――とくに避妊・中絶・出産に関する選択の自由を求め始めました。当時の多くの社会では、女性の性や生殖に関する自己決定権が制限されており、医療や法制度もそれを支えるものではありませんでした。

SRHRが正式に国際的な議題として認識されたのは、1994年にカイロで開かれた国際人口開発会議(ICPD)です。この会議では、以下の合意形成がなされました。

「性と生殖に関する健康(Reproductive Health)は基本的人権の一部で、女性だけでなく、すべての人が対象である。出産や避妊だけでなく、性に関する教育・サービス・暴力防止なども含まれる」

これにより、国連加盟国の多くがSRHRの理念に基づく政策づくりを進めていくようになりました。

そして2015年の国際連合で採択された、今や誰もが知る「SDGs」の17目標のうちの3と5に、「SRHRへの普遍的アクセスの実現」が目標として明記されています。

稲葉可奈子(いなば・かなこ)
産婦人科専門医・医学博士・Inaba Clinic 院長
京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得、双子含む四児の母。産婦人科診療の傍ら、子宮頸がん予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報を、メディア、企業研修、書籍、SNSなどを通して発信している。婦人科受診のハードルを下げるため2024年渋谷に小中学生から通えるレディースクリニック Inaba Clinic を開院。みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト 代表 / メディカルフェムテックコンソーシアム 副代表 / フジニュースα・Yahoo!・NewsPicks公式コメンテーター
(写真:本人提供)
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