思春期に知りたい「体の自己決定権」とは?「性の話題」タブー視は危険を招く SRHRを伝えないと妊娠・出産の圧になることも

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大事なポイントは、「健康」であることだけでなく「権利」もある、ということ。

Sexual Health and Rightsには、性的なことだけでなく、性別にまつわる健康課題も含まれます。例えば、生理痛やPMS(月経前症候群)の症状は治療により改善することができますが、治療をするかどうか、について自分で決める権利があります。

Reproductive Health and Rightsは、子どもを望むか、望まないか、いつ、何人の子を望むか、について自分で決める権利があるということ。

子どもを望む権利だけでなく、「望まない妊娠をしない権利」もあります。望まない妊娠をしないためには「避妊」が必要です。ですが、日本では、避妊についての性教育が十分ではなく、避妊は保険診療の対象外のため自費です。

また、女性がピルなどで避妊をすることが「ふしだら」ととらえる風潮がいまだに垣間見られます。これは理不尽な話です。ちゃんと避妊をしない男性がいるし、コンドームでは避妊効果が不十分だから、女性は望まない妊娠をしないために、自分の身を自分で守る必要があるのです。

それにもかかわらず、「ふしだら」と揶揄するのは理にかなっていません。女性は避妊することを1ミリも恥ずかしがる必要はありません。避妊は体の自己決定権の1つなのです。

残念ながら今は、避妊の話をしづらい雰囲気があります。結果として、望まない妊娠をしてしまい、女性が1人で出産して子を遺棄してしまい女性が逮捕される、という悲しい事件があとを絶ちません。

なぜ日本ではSRHRが浸透しにくいのか?

SRHRが日本で浸透していない背景には、いくつかの要因が考えられます。1つは、性教育に対する根強い誤解とタブー視です。性について話すことが「恥ずかしい」「早すぎる」「性的な行動を助長する」と誤解している保守的な考えにより、適切な性教育が阻まれています。

学習指導要領に「妊娠する過程については教えないこと」といういわゆる「はどめ規定」があり、それにより全国の先生方が教えづらい状況となっています。教えてはいけないわけではないのですが、はどめ規定がクレームの後ろ盾となってしまいかねず、安心して教えることができません。

また、教育現場では教員側にも十分な研修機会がなく、「どこまで、どのように、教えてよいのかわからない」といった不安の声があります。結果として、性教育が避けられ、科学的・権利的に重要な内容が生徒に届かないという悪循環が生まれています。

一方で、国際的にはSRHRが教育・保健政策の中心に据えられている国も多くあります。例えばスウェーデンやオランダでは、小学校の段階から性と身体、関係性についての教育が行われており、自分の気持ちや他者との距離の取り方なども含めて学ぶ機会があります。また、教師が研修を受ける機会も設けられています。

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