思春期に知りたい「体の自己決定権」とは?「性の話題」タブー視は危険を招く SRHRを伝えないと妊娠・出産の圧になることも
学校でSRHRを扱う際に気を付けておきたいポイントは、
● 価値観を押しつけない:「産むこと=正しい選択」とならないよう配慮する
● 多様な生き方を前提にする:結婚・出産しない人生も含めて紹介する
● 生徒の背景に目を向ける:家庭状況や性暴力の被害など、個々の事情に配慮する
● 正確な知識をもとに説明する:感情的・道徳的な表現ではなく、科学的根拠に基づいて説明する
教育とは、「こうしなさい」と枠にはめることではなく、「正確な知識をもとに、自分で考え、自分で選ぶ力」を育てることですよね。SRHRの教育も同様なのです。
SRHRへの理解や包括的性教育は「防災」
私たち大人は、思春期の子どもたちに対して「守る」ことに意識を向けがちです。大切にしたから「教えない」「見せない」と考えてしまうかもしれません。しかし、子どもたちに正しい知識を教えないでいるのは、同時に危険にさらしていることを意味します。
子どもたちは、大人の知らないところで、日々どんどん新しい情報に触れますが、その情報は玉石混淆。そんなとき、SRHRについての知識があれば、あるいは包括的性教育(ジェンダー平等や性の多様性を含む人権尊重を基盤とした性教育)を受けていれば、防げるリスクはたくさんあります。いわば「防災」です。将来、大切な人とよりよい関係を育むためにも、SRHRの概念を理解することは大事です。
そして、性に関する話題を避けるのではなく、「相談することは恥ずかしいことではないんだよ」「困ったときにはなんでも相談していいんだよ」という姿勢を、日常から伝えていくことが何より大切です。
とはいえ、親子関係や生徒との関係は一筋縄ではいかないもの。オープンに話せる雰囲気の家庭・学校ばかりではないと思います。
「話すのが難しくても、何か困ったら、親や学校の先生なり、とにかく誰か大人に相談していいんだよ」とちゃんと言語化して伝えて、心理的安全性を担保してあげてください。
ちなみにSRHRは子どもたちのためだけでなく、大人自身の人生や健康にも関わる、すべての人の権利です。体のことで何か困っていることがあれば、我慢せずに専門医にご相談ください。
(注記のない写真:mapo / Getty Images)
執筆:産婦人科専門医 稲葉可奈子
東洋経済education × ICT編集部
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