思春期に知りたい「体の自己決定権」とは?「性の話題」タブー視は危険を招く SRHRを伝えないと妊娠・出産の圧になることも

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こうした国々では、SRHRを含めた性教育は性的な行動を助長するものではなく、むしろ子どもたちの安全を守る、と認識されています。

思春期から男女ともに知っておきたいSRHR

思春期は、心も体も大きく変化する時期です。この時期にこそ、

月経や射精など、自分の体に起きる変化を正しく理解する
妊娠や性感染症について、科学的な知識を持つ
性的な情報に対するリテラシー(見極める力)を身に付ける
自分や他人の身体、性、考え方を尊重する態度を育む
「嫌だ」と言っていい権利、「同意」の大切さを学ぶ

といったSRHRの基本を知っておくことが大切です。これらのことを思春期のうちに知っておくことで、望まない妊娠や性感染症にかかることを防ぐ。あるいは、性暴力の被害者にも加害者にもならない、そして将来、子どもを望んだときに適切なタイミングで妊活を始められる、といったことにつながります。

「え、いちいち教えなくても当たり前のことでは?」と思うかもしれません。しかし、中高生の頃からその認識を持っていたでしょうか。

「いやいや、中高生でそういうことをしなければよいのでは?」という考えもあるでしょう。しかし日本財団の「18歳意識調査 第39回(2021年)」によると、23.6%が性交渉を経験しています(回答者は全国の17〜19歳の男女920人)。

実際、日本の「性交同意年齢」は16歳です。なんと2023年まで13歳でした。これは本当に“ありえない”話で、教えてもいないのに法的には13歳で「自分で考えて同意できる」とみなされていたわけです。

2023年7月に16歳に引き上げられましたが、13歳以上16歳未満は、5歳以上離れていなければ「不同意性交等罪」は対象となりません。ということは、13歳までに、遅くとも16歳までに、SRHRや包括的性教育が完了している必要がある、ということです。

いつそういう機会が訪れるか、誰にもわからないですし、事前に大人に話したりしないもの。性的なことに興味があるかどうか、初交年齢が早いか遅いかにかかわらず、だれしもが知っておくことが大事なのです。

「興味がないのに教えたら、逆に興味を持ってしまうのでは?」という心配は無用。実際は逆で、性教育を行うことにより初交年齢はむしろ上がり、性的な行動に慎重になる、ということが海外のデータから示されています。知識を持つことは、行動を促すこととは違います。

妊娠についても「若いうちは妊娠してはいけない」「将来は子どもを産まなければいけない」という圧ではなく、「産むかどうか、いつ望むかどうか、を自分で選べる」という選択肢とその方法を知っていることこそが、SRHRの本質です。

※引用元:日本財団公式ウェブサイト

学校でSRHRを扱う際に気をつけておきたいこと

最近、秋田県の高校で配布された「プレコンセプションケア(性や妊娠に関する知識を身に付け、健康管理を行うこと)」の冊子が炎上しました。高齢出産を揶揄し、妊娠出産を必要以上に促すような内容だったためです。

たしかに、この冊子は将来妊娠を望んでいる方が、のちのち後悔しないように知っておいたほうがよい内容でした。しかし、妊娠を望むかどうかまだわからない高校生たちに、その選択肢としてのSRHRを教えることなく「プレコンセプションケア」を伝えたために、妊娠・出産への圧ともとらえられるものとなってしまいました。

「知っておいたほうがよい内容」であっても、いつ、だれに、どのように伝えるかはとても重要です。それを間違えると、今回のように炎上しやすい話題でもあります。そうなると、「触れないのが無難」と思われかねませんが、そんな中でも、教えようとしてくださっている多くの先生方には心より感謝申し上げます。

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