韓国・尹錫悦大統領が罷免された理由は何か、憲法裁判所が判断した憲法・法律違反の根拠と判断
また、尹大統領側が戒厳令宣布理由の1つとして示した「不正選挙疑惑の解消」も認めなかった。憲法裁は「選挙管理委員会が2024年4月に実施された国会議員選挙前には、開票過程に検票制度を導入するといった対策を講じていた」と指摘。「戒厳令は警告するためのものだった」という尹大統領側の主張を、「戒厳法が定めた宣布の目的ではない」と排除した。
憲法裁判所は、戒厳令宣布が「戒厳令を宣布する際、国務会議の審議を経なければならない」という戒厳法の手続き的要件にも違反したと判断した。
国会の動きを妨害したのは違憲
②国会などの活動を禁止した布告令1号
憲法裁判所は、国会などの活動を禁止した「布告令第1号」を発令したことについて「国会に戒厳令の解除を要求できる権利が与えられている憲法条項、そして政党制度を規定した憲法条項と代議制民主主義、権力分立の原則などに違反した」と指摘、これを違憲・違法と判断した。また「憲法及び戒厳法条項、令状主義に違反し、国民の政治的基本権、団体行動権、職業の自由などを侵害した」と指摘した。
戒厳令の布告直後に発表された布告令第1号には「国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁止する」という内容があった。またマスコミ・出版を統制し、ストライキ・集会などを禁止したことも憲法違反ではないかとの批判が集中していた。
③「国会議員らを引きずり出せ」と大統領が指示したのか
尹大統領が国会に集まった国会議員を引きずり出し、戒厳令を解除するための議決を妨害しようとしたという疑惑についても、憲法裁判所は認めた。
「尹大統領は国防相に国会に軍隊を投入するよう指示した。これに対し、兵士たちがヘリコプターを利用して国会に進入し、ガラス窓を割って本館内部に入ることもあった。陸軍特殊戦司令官などにドアを壊して中にいる人員を連れ出すよう指示した」と明らかにした。
このような状況の中で、国会議員の一部は国会の塀を越えたり、まったく入れない議員もおり、国会が持つ権限の行使が妨害されたことは国会に戒厳令解除要求権を付与した憲法条項違反であり、国会議員の審議・議決権・不逮捕特権の侵害だと憲法裁判所は判断した。