"最初で最大の難題"だった予算「年度内成立」をクリア、それでも終わらない石破首相"苦悩"の深層
さらに大きな障害となったのが、石破首相自らが火だるまと化した「商品券配布問題」の発覚だ。予算案の衆院通過直前の3月3日夜、石破首相が首相公邸で新人議員15人と懇談した際、事前に1人10万円の商品券を配っていたことが、3月13日に発覚したものだ。これが、「石破首相のクリーンなイメージの消滅」(自民党幹部)という深刻な状況を招いた。
もともと、立憲民主党を筆頭とする野党幹部も「自民党の『政治とカネ』の問題と予算審議は切り離して、予算は年度内に成立させるというのが本音」(立憲民主党幹部)だった。だが、「商品券配布問題」発覚後は「政府と与野各党のそれぞれの思惑が複雑に絡み合い、各陣営が自縄自縛に陥った」(同)のが実態だ。その結果、「年度内成立優先との“正論”を誰も言い出さず、“熟議の限界”を露呈」(閣僚経験者)した。
石破首相が参議院での予算審議が大詰めを迎えた3月25日に突然、「予算成立直後の物価高対策」に言及したことも、さらなる事態混乱につながった。野党側は最終局面で政府与党に「短期の暫定予算編成」を求めたが、与党は「時間切れ」を理由に応じなかった。
立憲民主党など野党側は、与野党交渉の最終盤まで抵抗を続けたが、自民党の巨額裏金問題を解明するために野党が要求した旧安倍派参院幹部だった世耕弘成・元経済産業相(自民を離党)の参考人招致に自民党が賛成したことに加え、予算成立後に石破首相も出席する衆院予算委の集中審議の開催を自民党が受け入れたことで、矛を収めた。
商品券問題は「政倫審出席・弁明」でも落着せず
今国会前半戦での最大の危機を乗り越えた石破政権について、政界関係者の間では「新年度以降の国会攻防で大失敗しない限り、会期末まで政権維持できる」との見方も広がる。官邸関係者の多くも「今国会最大の関門」だった政府予算の年度内成立を受けて、安堵の表情を隠さない。
だが、4月1日に就任から半年の節目を迎える石破首相は周辺に「感慨などない。これからはとにかく失点しないように気をつけるしかない」などと、苦しい胸の内を吐露しているとされる。
石破首相にとっての最大の悩みは、やはり国民の強い批判を招いた「商品券配布問題」だ。首相はその後の野党の激しい追及に対して「政治活動に関する寄付には当たらない」などと繰り返し、違法性を否定。しかし、多くの専門家は「法に抵触する可能性がある」(日本大学の岩井奉信名誉教授)と指摘しており、「説明すればするほど国民の批判が拡大するという“蟻地獄”」(自民党長老)にはまっているのが実態だ。
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