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〈現地取材〉秋田県「洋上風力の街」の期待冷めやらぬも、一部は「三菱商事ショック」に不安隠さず

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これを含めて秋田では一般海域の大規模洋上風力プロジェクトが4件あり、風車は合計149基建設される計画だ。そのすべてにダビットクレーンが設置される。

東光鉄工の競合は国内だと県外に1社しかなく、海外でも5社程度。資材価格が高騰し、クレーンの販売価格に転嫁せざるをえないが、それでも為替の影響などを考えると海外製に比べ競争力は十分あるという。

ただ、1基数千万円のダビットクレーンの製造・販売は「入り口」にすぎない。風車が20年間稼働する間、自社製クレーンのメンテナンスを一手に握ることができる。さらにダビットクレーンの営業を起点に1プロジェクトで10億円規模になるTPの仮置き架台や輸送架台の受注につなげることもできる。

菅原社長は、「組んでいるパートナーの関ケ原製作所(岐阜県)には洋上で使うクレーン製造に圧倒的な強みがある。秋田のプロジェクトのみならず、全国でダビットクレーンの受注を総取りしたい」と意気込む。

期待は高まる一方だった

秋田県内ではプロジェクトごとに陸上送変電施設工事を中心に地元企業と発注者が集って大小のマッチング商談会が何度も開かれている。中には200人を超える参加者でにぎわう商談会もある。

丸紅の秋田港・能代港のプロジェクトでは総事業費約1000億円のうち、ケーブル埋設の土木工事や電気設備の設置工事などを地元の会社が担った。地元への発注は100億円を超えた。

能代市に本社を置く大森建設は、県内で100基以上の陸上風車建設に携わった経験を持つ。秋田港・能代港のプロジェクトでは起重機船を新造し、海底地盤調査の工事から海底の土砂の流出を防ぐ洗掘防止工事、送電線の陸揚げ設備工事やケーブル埋設工事などを担った。

「洋上風力は国内初の事業でもあり、成功するとの保証はなかった。参入には二の足を踏んでいたが、しっかりと建設工事の実績を積めば、次の仕事にもつながるのではないかと思い切って参入した」。大森啓正専務はそう話す。

大森建設の作業員運搬船
秋田港・能代港洋上風力で活躍する作業員交通船(写真:大森建設)

風車が回り始めると、メンテナンス技術者を風車まで運ぶ船も必要だ。大森建設は地元の同業などと2019年に運営・保守専門会社を立ち上げ、秋田港・能代港のプロジェクト向けに約12億円をかけて作業員交通船(CTV)を2隻新造した。

「今後、一般海域のプロジェクトでも建設工事、メンテナンスなどの入札が次々に出てくる。自分たちが培ってきた技術やVE(バリューエンジニアリング)を活用して積極的に参入していきたい。すでに具体的な準備もしているところだ」(大森専務) 

県内で高まる洋上風力への期待。ところが今年2月、その期待を揺るがす事態が起きた。

「第1ラウンド」で秋田県沖と千葉県沖のプロジェクトを「総取り」した三菱商事が資材高騰の影響などから522億円もの減損を計上。「ゼロベースで事業を見直す」としたのだ。秋田県に関しては2028年12月と2030年12月に運転開始予定だった2海域、風車86基の建設スケジュールが見通せなくなった。

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