DIC「美術館」は生き残るか、すべて換金し株主が山分けか?六本木に「縮小移転」をファンドは許さず、株主総会を前に創業家との関係を問題視
今年3月、DICは公益財団法人国際文化会館と協業で合意した。国際文化会館が六本木再開発を機に新設する新西館に、美術館は移設される。
移転縮小にあたってDICは保有する美術品384点を至宝「ロスコ・ルーム」など4分の1に絞り、ほかの作品は売却を進める。まず2025年12月期に100億円を現金化し、同程度を追加の株主還元の原資とする。
要は含み益の大きな隠れ資産を切り売りして株主に配分するというわけだ。
しかし、オアシスは「企業価値を最大限にするためには、美術品をすべて売却しなければならない。最も価値の高い作品を移設し、株主に帰属する財産を取り上げようとしている」と批判。3月27日の株主総会では猪野薫会長・池田尚志社長の再任に反対する構えで、株主に反対するよう呼びかける。
創業家「ワンマン経営」の遺物と遺産
オアシスは美術館の生みの親でもある創業家とDICとの関係にも着目。東京・日本橋にあるDICの本社ビルが、創業家の支配下にある不動産会社の所有物件であり、DICは毎年25億円の賃料を支払っていることなど創業家の関連会社との取引を問題視する。創業家が支配する会社は現在、DIC株の13.37%を保有する。
会社側は一般的な条件の取引だと説明するが、オアシスは企業経営の公平性・透明性を保つコーポレートガバナンスの面で懸念を示す。オアシスは株主総会に、関連当事者間の監督を強化するよう定款変更する議案を提出している。
オアシスが作成した株主向けの資料の中に、創業家3人の肖像画がある。美術館のエントランスから展示室に向かう通路に掲げられたものだ。1908年に創業した川村喜十郎氏、息子で2代目社長の勝巳氏、その娘婿で3代目社長の茂邦氏(いずれも故人)。美術館設立は、茂邦社長時代の1980年代後半、相談役の勝巳氏が主導した。
言ってみれば、創業家のワンマン経営ゆえに価値あるコレクションは生まれた。しかし、今の株式市場では、コーポレートガバナンスと資本効率向上が至上命題だ。ワンマン経営の遺物は、長年の取引も美術品の隠れ資産も、すかさずアクティビストに炙り出される。
訪れた人に感銘を与える美術館は、危うさの上に成り立ってきた。企業を取り巻く環境が変わり、バランスを失した先は、美術品を換金して山分けか、あるいは美術館運営の価値の位置付け直しか。どちらを選ぶかは株主の判断に委ねられている。
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