いきなりステーキ「静かに黒字化」何が変わったか 急成長→凋落→ひっそり回復基調…その現状とは

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

要するに「他の食事より、少し高くなっても、いきなり!ステーキに行きたい」という「ファン」層が拡大していることも利益向上の理由の一つだろう。

いきなり!ステーキ
いきなり!ステーキ
値上げ以降、客数は前年割れを続けているが、売上高、客単価は増えている。客数が増加に転じれば、一気に業績が良くなる可能性もある(出所:同社の月次資料より)

この背景には「肉マイレージ」も大きく影響していると思われる。

このシステムはいきなり!ステーキの初期の頃から人気で、一時期はこのランク上げに邁進する求道者たちがコミュニティを作ったりして、熱を帯びていた。

ただ、いきなり!ステーキは経営が傾く過程の中でこの制度を変更し、それが「改悪」として不評を呼んで同社離れをさらに加速させたこともある。それまでは食べたグラム数に応じてマイレージが付与されていたのが、来店回数に応じたポイント制に変わったのだ。

つまり、1回でどれほど食べようともポイントは1つしか貯まらない。これでは、店でたくさん食べてレベル上げをしよう……という気持ちにならないのは当然だ。

こうした声を受け、次第にシステムが改善。2024年5月には、会計100円毎にポイントが付与されるシステムになった。改悪前並にお得に戻った……というわけではなかったりするものの、「どれぐらい食べたか」によってランクが上がる仕組みになっており、求道者たちの心を再度くすぐっているようだ。

いきなり!ステーキ
店では、公式アプリの登録を促していた。新しいファン層を作る構えだ(筆者撮影)

そんなファンたちが客単価を上げ、堅実な利益向上に貢献している。

そもそも、いきなり!ステーキが爆増したときに「そもそも、ステーキ好きの人は日本ではニッチだからそんなに増やしても意味がないのでは?」と言われたりしていた。

事実、現在はある種そうしたニッチな「ステーキ好き」に特化した戦略へと変更を行い、着実に利益を上げ始めているのが、今のいきなり!ステーキなのだ。

堅実に稼ぐようになってきたいきなり!ステーキ

こうした相対的なお得感とファン層の形成に、セルフレジや券売機の導入のようなDX化の推進が加わった複合的な要因で大幅な利益向上がはかられたのだろう。

ニセコ化するニッポン
『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。楽天はこちら

とはいえ、ペッパーフードサービス全体で見るとまだ赤字事業も多い。それに、いきなり!ステーキを明らかにベンチマークに置いた沖縄の「やっぱりステーキ」は、いきなり!ステーキ以上のローコスト運営で快進撃を続けているから、うかうかしてはいられない。

ただ、ここ数年のいきなり!ステーキの変化を見ると、なるべく店舗運営のコストを下げつつ、安価で商品を提供し、熱心なファン層を作る……という、 外食チェーンの経営の基本のひとつに忠実になっている。

店舗の急拡大や肉マイレージの改悪などの数々の反省を生かしつつ、いきなり!ステーキが今後どうなっていくのか、さらに注目を続けていきたい。

【もっと読む】ガストが投入「990円・3品セット」何がどう凄いか 背景にはファミレス業界の大きな変容がある では、ガストで始まった新メニューの凄さや戦略的な狙いについて、チェーンストア研究家の谷頭和希氏が詳細に解説している。
谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事