史上初、JR・路面電車「車両デザイン交換」なぜ実現 広島「新駅ビル」だけではない深いストーリー
新駅ビルでは工事がもう1つ行われている。駅前に駅(電停)がある広電の路面電車が高架橋をわたって駅ビル2階に乗り入れるのだ。完成すればビル2階にある新幹線や在来線の改札と広電乗り場が直線で結ばれ、利便性は格段に向上する。地上と2階をつなぐ長さ259mにわたる高架橋を建設中で、今年夏頃の完成が目標だ。
これらの事業を盛り上げるためにできることはあるか。JR西と広電の定例会議で齋藤さんが「両社の車両デザインを入れ替えるのはどうだろう」と提案した。「あくまで1つのアイデア」のつもりが、「それ、面白いね」とトントン拍子に進み、広島市も含めた全体会議において実現が決まった。2023年夏のことだ。
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「レッドウィング」のデザイナーが担当
誰に車両のデザインをお願いするか。齋藤さんには意中の人がいた。JR西の鉄道設計技士としてレッドウィングをはじめ数々の車両の設計やデザインに携わった大森正樹さんだ。現在はJR西日本グループの関西工機整備に出向して鉄道の案内サインや時刻表の制作などを行っている。齋藤さんは3者会議が終わると、その日のうちに大森さんに電話して快諾を得た。
大森さんは早速スタッフと共にデザイン作りに着手、1カ月ほどして関西工機整備から齋藤さんの元に3案のデザインが届けられた。227系の車体に3950形「ぐりーんらいなー」、5100形「グリーンムーバーマックス」、5200形「グリーンムーバーエイペックス」の3つのデザインが描かれていた。齋藤さん自身、鉄道ファンでもあり、「つり目のような精悍な顔つきであり、加速減速時のVVVFインバーターの音も好きな3950形が採用されればいいと個人的に思っていた」という。
その後、広電にも3案を示し、検討の結果、グリーンムーバーマックスに決まった。齋藤さんも「個人的な趣味は抜きにして、グリーンムーバーマックスのデザインでよかったと思います」。
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